ボーダー

早朝5時。

皆眠そうにしている。

特に友佳だ。
元バスケ部部長だし、スタミナはあるはず。
眠そうでも心配はしていなかった。

遅刻を防ぐため、前日の夜から羽田空港近くのホテルに泊まっている。

「おはよ。
朝早いの、大学生の練習みたいでいいな。」

私と違って、彼の寝起きはいい。
寝起きが悪く、隣のミツがいなかったら寝坊していた私と、寝起きの良さを交換してほしいくらいだ。

レンがミツを手招きして、何かを話している。
旅行の時の自由行動の話とかだろう、多分。

6時10分発の便で向かい、向こうには9時ちょうどに着く。

保安検査やらもろもろを終えて、6時ちょうどにゲートを通る。

『もうすぐ飛行機乗ります!
着いたら連絡するね!』

このメールを、私はこの旅行に参加出来ないブライズメイドたちに、ミツはアッシャーたちに送る。

これで、連絡が取れなくても不審がられない。

少し搭乗ゲート付近で水を飲んでから、券を機械に通した。

エコノミー症候群になっちゃうと困るからね。
少しくらい、水は飲んでおかないと。

七分袖の小花柄ブラウスに濃い色のデニム、ネイビーのリュックという私の今の格好。

このブラウスは言わずもがな、昨日の午前中の麻紀との買い物で仕入れたものだ。

道中の飛行機で知ったこと。

ミツは卒業前からちょくちょく、カフェでアルバイトをしながら費用を貯め、自動車免許取得のための教習所に通っているとのこと。

幼なじみでかつ恋人の私が知らなかった。
知らない事実にぷい、と窓の方を向く。

「何で言ってくれなかったの?」

「んー?
自動車免許無事に取れたら言おうと思ってた。
それに、カフェでアルバイトしてるなんて言ったら、ハナがバイト先の女性の同僚とかに勝手に妬くんじゃないか、って思ったの。

……そのハナのリアクションだと、当たりなんだな。
妬くハナ、今すぐ襲いたいくらい、可愛いからいいけど。

妬いてくれても、ハナ以外には欲情しないから安心しろ?」

「もう、バカ!
……ミツがそう言うなら許す。」

「どっかのカップルのイチャイチャがお熱いからさ、機内の温度上がったんだけど。
扇風機かクーラー欲しい。」

「まぁまぁ。
ウチらも後で負けないくらいイチャイチャすればいい話じゃん、真ったら。」

「んー?
麻紀、それは夜のお誘い、って受け取っていいんだよね?」

「真ったら!」

冷やかす本人たちも、相当お熱いんだけど。

お菓子を食べながらそれぞれの進路の話やこの旅行のことなどを話していると、2時間10分はあっという間だ。
再びシートベルトをして、着陸は成功。

無事に那覇空港に降り立った。

「愛実も、来れれば一番良かったのに。
まぁ、仕方ないけどね。」

「写真撮ろうよ、写真!
愛実と和貴くんに送ってあげよう!
ちょっとでも旅行気分を味わってもらうの!」

荷物を取った後、さっそく麻紀が動いた。
フットワークが軽い子は、こういうときに助かる。

「真!
蓮太郎くんに御劔くん、
友佳の旦那さん!
写真撮るから集まってー!

すみません、カメラのシャッター押してもらえませんか?」

近くを通った女性に、声を掛けるのは友佳だ。

「はい、チーズ!」

いい感じで写真が撮れた。
後で皆に流そう。

「カメラのシャッター、押していただいてありがとうございました!」

気にしないでいい、というように手を振って、去っていく女性。

モデルだろうか。
白い肌に、茶髪。
春らしい花が、耳を彩っている。
ピアスか。

いいなぁ、ピアス。

卒業したらあけよう、と決めていた。

メイちゃんとレンの挙式が終わったら、あけようかな。

「今の人、見覚えある気がするんだけど、思い出せないなぁ。」

「きっとヘアメイクさんとかマネージャーさんとかがたくさんいたから、モデルさんじゃないかな?
アメリカの蓮太郎くんの祖父母の家で見た、モデルの彼女に雰囲気似てた。」

レンの祖母の家で見たモデルの子、といえばナナだけだ。

ナナ、だったのかな?