ボーダー

帰った後は、今日は両親とも帰りが深夜になるというので、せっかくなので私の家に呼ぼう、と思った。
レンの家を使っていいと武田さんに言われたため、そうすることにした。

レンの別荘は、ブライズメイドやアッシャーはもちろん、そのサポート役の人なら、武田さんの許可を得れば使っていいことになっている。

「お疲れ、ハナ。」

「いい奥さん、だけじゃなくていい母親にもなれそうだな。

あまり矢浪と元気に遊ぶのは得意そうじゃない子に、馴染むためと、なおかつ俺も自然に輪に入れるために、ババ抜きやら神経衰弱やらに誘ったの、さすがだな、って思った。」

部屋に入るなり、そう言って頭を撫でてくれたミツ。
そう言ってもらえると嬉しいが、何より母親という言葉でそういう行為を想像してしまって、マトモに彼の顔が見られない。

あらかじめお互いの家に寄って持ってきたパジャマを持って、浴室に向かった。
あの高級ホテル以来、2回目だ。
一緒に、なんていうのはまだ慣れない。
むしろ恥ずかしい。

服を脱いだ後、タオルを身体に巻き付けたものの、タオル禁止、と言って外されてしまった。

「あっ……」

頭からシャワーを浴びつつのキスは、何だかイケないことをしている気分になって、いつもより敏感になっている。

「可愛い。」

刺激もそこそこに、身体を洗い終えると浴槽に浸かる。

「この間はレンと2人でシャワーだったから、ここ、初めて使ったけど、確かに2人余裕だね。
こんな体勢じゃなくてよかったかな?」

ミツの脚の間に私が座る形になっている。
思いっきり当たってるんだけど……

「好きな子と一緒にお風呂入ってこうならない男いないよ?
いいかげん慣れて?」

「そう言われても……」

この感覚はまだ慣れない。
その上、刺激はほとんどされないままの膨らみに、角張った手で触れてほしくて仕方がない。

「んー?まだ慣れないか。
慣れるために、部屋戻って直で見てみる?
わざと焦らしたから、触れてほしくて仕方ないだろうし。」

言うが早いが浴槽から上がって、適当に部屋着のワンピースを着た後、部屋に戻る。

「風呂上がりの可愛い部屋着姿、毎日見れるように、早くなりたいんだけどね?」

そう言いながら、身体に落としてくれる唇がくすぐったい。

「上触らなくても、もう準備万端だね?
オレも準備できてるよ?」

必ず私にそっと触らせて、薄い膜が被っていることを確認させる。

合図は、いつもの舌が絡まる、深いキス。

「ん……う……」

「ハナ。
その顔、すげー可愛い。」

繋がった後も、今日は私の名前を呼んでくれることが多い。

「っ、やべ、
好きだよ、大好き。」

私に優しくキスをくれた後に、薄い膜越しだが熱さを感じた。

「もう。
溜めすぎは良くないよ、って言ってるのに。」

「んー?
来月の11月半ばにオレたち、指定校推薦だろ?
それまでは、オアズケしないとな、って思ってるから。
ダメだった?」

そう言って、頭を撫でてくれる。
それに甘えて、寝転がる。

そうだ。
あっさり推薦の許可は降りて、先週出願したんだった。

麻紀も真くんも、調理師学校への入学は決まっている。
愛実なんてAO入試で早々と希望の大学への入学を決めてしまった。

和貴くんは、センター試験での合格を狙って勉強している。
転校してきたので、推薦で狙うには成績が足りないのだ。

「頑張らないとね。
不安だけど、そうも言ってられないや。」

「だな。
大丈夫。
離れたところから、オレの幼なじみも応援してくれてるだろうよ。」

アクセサリーケースに入った、タンザナイトのネックレスに視線を一瞬だけ移して、微笑んだミツ。

その顔が絵になる美しさで、絵心がないのを悔やんだ。

私に横になっているよう言ってから洗面所に向かった彼は、10分くらいで戻ってきた。
そして、部屋に入るなり、自分の鞄を漁った。

そして1冊の本を手に戻ってきた。

そこには、『司法試験対策用問題集』と書かれていた。

「兄貴がプレゼントしてくれてな。
割と解説が難しいほうと、分かりやすいイラスト付きのがあったから、分かりやすいほうをハナに、って。

コイツがあれば、指定校推薦も大丈夫だぞ。

何せ、信頼できる筋からの情報によると、『講義理解力試験』なるものがあるらしい。

それには多少なりとも知識があったほうがいいだろう、という見立てだ。」

「もう、そこまで考えてくれてて、大好き!」

……優しすぎるのよ、ホントに。

ぎゅ、と抱きついて、優しい彼氏にご褒美でもあげよう、と思ったのに、疲れていたのか眠ってしまった。