「さて、呼んだ子は全員揃ったわ。
ということで、男性陣はここ、女性陣は申し訳ないけれど、階段を上がって右にある書斎に来てくれるかしら。
モデルの彼女は時間が限られているから、手短にいくわよ。
人も待たせているしね。」

レンの婚約者であるメイちゃんの案内で、ハナとオレは分かれた場所にいることになってしまった。

さっき、レンがオレに話したいことがある、と言っていたことと、関係しているのだろうか。

ごめんね、と申し訳無さそうな顔をしながら、ハナはオレを振り返る。

我慢出来なくなるから、そんなに可愛い顔をしないでほしい。

レンも含めたオレたち男性陣は、女性陣が無事に階段を上がるのを確認した。

「お待たせ、ここからが本題だ。」

とこの場を仕切った。

「皆、オレの信頼できる幼なじみや友人を集めた。
それには理由がある。

というのも、あくまでも予定ではあるが、来年の秋にさっきまでここにいたオレの婚約者のメイと籍を入れる。
その後、来年の3月半ばに挙式を考えている。

もちろん、このことは婚約者であるメイとの共通認識もある。

あくまでも、オレたちと気心の知れた人たちしか呼ばないつもりでいる。

その上で、お願いがあって、この場を設けた。

オレたち2人の挙式の、アッシャーをお願いしたい。

大きくやってほしいことは3つ。
当日、写真撮影の際の華やかさを重視するために、極力女性側のブライズメイドと衣装の雰囲気を合わせてほしい。

挙式後の二次会の幹事を頼みたい。

それと、披露宴のゲストの受付を、ブライズメイドと一緒に引き受けてほしい。

ポカン、とした。

……それだけ?

「レン。
頼みたいことはそれだけか?
もう少し増やしてもいいぞ。

そして、もっとカジュアルな頼み方で良かったんだ。
レンらしくないぞ?改まって。」

「そうだぞ、蓮太郎。
俺なんて、いろいろとあったが、幼少の頃からお前を知ってるんだ。

いろいろとあった俺でさえ、こうしてアッシャーの役割を頼んでくれて嬉しいんだ。」

「よく言った、奈斗。
俺がこうして由紀と一緒にいられるのも、由紀のヒモ男じゃなくなってるのも、蓮太郎のおかげだと思ってるからな。

アッシャーの役割がそれっぽっちじゃ、お礼にすらならないよ。
蓮太郎や優たちみたいに、勉強をバリバリやってるわけじゃない分、俺が割と積極的に動けるから。
それも十分なメリットだろ?」

奈斗や将輝が、口々にオレと似たような言葉をレンにかける。

口々に言う皆を制して、オレはレンの肩を抱いて言った。

「オレを最初、この4人を取りまとめるリーダーにしようとしたが、今の言葉を聞いて迷った、というのが正しそうだな。

おそらく、女性版アッシャーのブライズメイドのリーダーは満場一致でオレの恋人になるだろうからな。

ブライズメイドのリーダーと関係が密接で、ブライズメイドとアッシャーの窓口になれる。
となると、オレが適任だとは思うぞ。

ここまで言ったが、選ぶのはレンだ。
どうする?」

「迷ってる?
今のは皆の言葉が嬉しくてちょっと泣きそうになってただけだ。
アッシャーをまとめるリーダーのベストマンは何があろうと、1番信頼できる幼なじみのお前に決めてたよ、ミツ。

よろしくな。」

「……任せろ。
大事な幼なじみの人生の門出が最高のものになるように手伝うのが、責務だと思っているからな。

できることがあれば、出来る範囲で手伝う。
何でも言ってくれ。」

ピピ、と小さく機械音が響いた。

「かべみみくん」の音だ。
このリビング以外にも、子機が書斎の壁についているらしい。

この音は、映像が転送された時に鳴る音だ。
ここの映像は、書斎にあるブライズメイドたちに届いているようだ。

『ミツ、聞こえる?
話、まとまったみたいだね?
こっちも、ほぼ同じタイミングで話はまとまったの。

今、こっちに当日のウェディングプランナーの取りまとめ役みたいな人がいるんだ。
その人と一緒に、皆で下に降りる!
待っててね!』

ブローチから聞こえたのは、ハナのテレパシーだ。
こういうときに便利なのだ。

パタパタ、という騒がしい足音と共に、メイちゃん、ハナ、ナナちゃんや由紀ちゃん、有海ちゃんがわいわいと話しながら、階段を降りてきた。