ボーダー

待たせるのはいつも私だ。
体育がお情けで3なのは、運動技能ではなく、試験で高得点だからだ。
運動能力だけを見るなら、成績は2。

皆、待たせてごめん……。

「さて、皆様。
夜ですので、お腹も空いたことでしょう。
夕食のご準備をいたします。

それまで、おくつろぎください。

蒲田様はメイ様、御劔様は旦那様とご一緒でお願いいたします。

なお、お話することがございます。
旦那様とメイ様、お部屋に荷物を置いたら私のところにおいでくださいませ。」

武田さんにそう言われて、私とメイちゃんはベッドが2つある部屋に案内された。

最初に目に入った2つのベッドは少し離れて配置されている。
寝相が悪いと落ちそうだ。気をつけないと。
大きな窓が正面と横にあるため、朝になると入る陽の光で、生活リズムを崩さず起きられそうだ。
こんな家に住みたい。

「行っておいで?
メイちゃん。
何ならイチャラブしてきてもいいよ?

夜、というかお風呂に入るときにでも、私といろいろ話す、ってことにして!
行ってらっしゃい!」

ベッドに腰掛けて正面の、窓に面して置かれているカウンターテーブル。
そこに自らの荷物とメイちゃんの荷物を置く。

彼女は、私があげた品が入っている紙袋から、アクセサリーケースというかアクセサリー持ち運び用のポーチを取り出し、開けようか迷っている様子だった。
諦めてポーチを元の紙袋に戻した彼女は、小さくため息をついていた。

きっと、レンとのイチャラブな行為に向けて、耳から下がっているピアスを外したかったのだろう。

その品は、見覚えがありすぎた。
レンが私に、好きな子の誕生日が近く、プレゼントをピアスにしたい。
しかし、何を選ぼうか迷っている、と相談されたからだ。
その際に、誕生石とかいいかも、と言って、オンラインショップのページを見せたことを鮮明におぼえている。

それをそのまま、彼が買うとは。

「あの、華恵ちゃん、だっけ?
ありがとう。
行ってきます!」

ピアスを外さないまま、部屋を出ていったメイちゃん。

彼女と入れ違いになるように、軽く部屋のドアを叩く音が響いた。
はーい、と間の抜けた返事をすると、ミツがそこにいた。

「ミツ、何かあった?」

「……特に何も。
ご褒美やる、って言ったの、覚えてるよね?
ご褒美あげにきたの。」

そう言って、ミツは私をベッドに座るように言い、口答え禁止、とでも言いたげに唇を重ねてきた。

「んっ……あっ……」

「……エロ。
男をその気にさせられる女って、最高なの。
分かる?

その短いスカートと、緩めのリボンはさ、わざとなの?
確信犯な恋人、むしろ嫌いじゃないけど。」

手は既にスカートを捲くりあげて太ももに添えられている。
首筋を強く吸われる。

「うん、いい眺め。
どうせなら、この下見せてよ。
いいよね?」

ブラウスのボタンだけではなく、オレンジのブラのホックもたやすく外される。

「……可愛いの付けてんね?
白も黒も好きだけど、こういうのもいいね。」

「んあっ……」

出かけた甘い声は、ミツの唇で塞がれて、あっという間に身体を覆うのは下着1枚だ。

最後の布もあっけなく脱がされて、直に触れられる。

的確な刺激に、ピク、と身体が跳ねた。

いつの間に、彼も脱いでいたのか。
制服のシャツもスラックスも、ベッドの下だ。

「可愛い恋人にそんな可愛い反応されちゃ、オレも限界。
いいよね?」

限界具合は、濡れた下着と先端から溢れる液体の多さと、彼自身の大きさが、それを物語っていた。

「は、あっ……」

部屋に響く、舌が絡まる音。
これが合図だ。

彼自身、常に持っているのか、ちゃんと薄い膜を被せてから、繋がってくれるのが嬉しい。

「……恋人が、ハナで、よかった。
好きだ、ハナ。」

「私もよ。
ミツ、大好き。」

「っ、やべ……」

薄い膜越しだが、彼自身の熱さを感じたあと、ミツの力がスッ、と抜ける。

頭を撫でてくれるのは、横になっていていい、の合図だ。

処理を終えると、自然に私の横に寝転がってくれるのも嬉しい。
私に、きちんと布団をかけて。

せっかく2人でいるのだ。
自然に、疑問が口から滑り出ていた。

「ね、ミツ。
いつから気付いてた?
ちょっとだけ、ミツの隣が私でいいのかな、って思ってたこと。」

「……なんとなく。
何年一緒にいると思ってるの?
幼なじみ……じゃない、とりわけ好きな女の変化には目ざといの。

オレは感情は優先しないわけじゃないが、論理的思考よりは優先度合いがめっぽう低い。
ハナは真逆だ。
感情の方を何より優先する。

多分、性別による脳の作りとかもあるんだろ。
由紀ちゃん辺りが詳しそうだがな。

だからといって、いい悪いをここで言うつもりはない。

一緒にいて居心地がいいし、オレが不得意なところをちゃんとカバーしようとして、視野を広く見てくれてるのが伝わるから、何より信頼してる。

この答えじゃ、求めてるものと違うか?
ハナ。」

自然に、頬に涙が伝った。
それが答えなのだろう。