<ハナside>
はあ。なんか今日疲れたなあ。
ベッドに倒れ込み、好きな音楽に身を預ける。
数分後、それを邪魔するかのように私の携帯が鳴る。

画面には、『宝月 蓮太郎』と表示されている。

レンだ!

「あ、レン?
私だよ!
ハナ。」

言わなくても分かるから、と電話越しに笑われる。

「どう?そっちは。
居心地いいの?」

『まぁな。
様子を見に、FBIの人だったり、近所の子も来てくれる。
身体を鍛えたい場合はジムとかも使えるし、充実してるよ。』

「いいなぁ、充実してて羨ましい。」

数時間前に無理矢理、見知らぬ男に男の股間にぶら下がるものを突っ込まれたなんて、レンには言えなかった。
何かあったかなんて、悟られちゃいけない。
明るく、いつもの声を意識した。

『何かあったら、遠慮なく話せよ。
レスポンスは遅くなるけど、ちゃんと返すからさ。』

「うん、ありがとう!
そう言ってくれて助かるよ!」

『いじめとかあったら言えよ。
さっき、少し話題に挙げた近所の子が13歳で検事になってる。
そこは自由の国アメリカ、何でもありだ。

その子に話持っていくこともできるからな。』

「今の所、そういうのはないけど。
もし、何かあったら、相談させてもらうね!

で、何?
その近所の子のこと、好きなの?」

その近所の子、どんな子なんだろう。
私と今のミツみたいな宙ぶらりんな関係なのかな。
そんな関係を進展させるお手伝い、いつかしたいかも。

『今は、そういう感情はないかな。
将来的には、分かんないけど。』

「そっちも、何かあったら言ってね!
アドバイスできるかも!」

今は、これくらいの言葉に留めておく。
本当に、好きな相手だと自覚してからが恋愛の始まりなのだ。

「身体が資本だから、無理せずがんばろうね!
勉強に部活。
レンは勉強に修行。お互いにいろいろ大変だろうけどさ。」

『そうだな。
ほどほどに頑張ろうな。』

まさか、レンが飛び級をするために必死に勉強をしているとは、当時の私は知らなかった。

レンの勉強の邪魔になるといけないので、早めに電話を切った。

これ以上電話をしていると、ボロが出そうだった。
幼なじみとして、ずっと一緒にいるのだ。
ちょっとのクセで、何かあったことがバレてしまいかねない。

レンには、バレたくなかった。

レンが当時言っていた近所の子が、まさか私と同じ目に遭うことになるなんて、その当時の私は思っても見なかった。