……やるな、というのが率直な印象だった。
どうやら、有海ちゃんの乗るイタリア行きの便が、奈斗のより先に日本を発つようだった。
ブルーのスーツケースを傍らに置いて、奈斗と向かい合う有海ちゃん。
ここまでは俺と同じだ。
最初に口を開いたのは、奈斗の方だった。
「有海、お前さ、両親から恋人候補を、いろいろ紹介されてるんだって?
……会ったりしてるのかよ、ソイツらと。」
……いきなり聞くなぁ。
「……会うわけないじゃん。
全部断ってるわよ、もちろん!
小さい頃からずーっと好きな人いるもん!」
ムキになって返すのは、由紀を彷彿とさせた。
「……ふーん、誰なの?それ。」
奈斗の奴、有海ちゃんから言わせる気だな。
……すると。
有海ちゃんが、そっと奈斗にキスをした。
「これで分かる?
好きでもない人にこんなことしないよ!
……好き。
何やってるのか分からなかった間も、どこかで会えれば、って思ってた。
それくらい、奈斗、貴方が好きよ。」
由紀にその積極性、分けてほしい。
奈斗は悔しそうに頭の後ろに手をやった。
「……チッ、好きな女に先に言われるってアリかよ。
俺も、好きだ。
有海のこと。
幼学部のときからずっと。
好きって言ってないのに、無理やりの行為とかヒドイことしたな。
それは、謝っても償いきれないや。
本当にごめんなさい。
帰ってきたら、今度こそちゃんと身体の隅々ま
で、本気で有海のこと、愛してやる。
こんな俺でも……好きで居てくれてたの、本当に嬉しい。
ありがとう。」
「……ううん。
昨日の夕方から賢正学園に居させてもらったのもすごい楽しかった。
スタッフの人、言ってたよ。
『奈斗くん、本来は優しい子なんです。
貴方の弾くピアノを聴きに行って帰宅すると、その様子をよく話してくれるわ。
貴方のそのピアノが、彼の音楽セラピーも兼ねてるのね。
ちょっとずつ、奈斗くんが心の奥底に隠していた彼自身の、本当の良い一面が、表に出てきているのを感じるの。
それは貴女のおかげなのね。』って。
私のピアノも、まだまだプロの領域には届かないから、もう少し上手くなる。
将来、私がちゃんとプロのピアニストになったら、海外と日本を行き来する生活になると思うの。
奈斗のこと、寂しくさせちゃう。
それでもいいの?
こんな私でも、いいの?」
奈斗は、泣きそうな有海ちゃんの額をデコピンで弾く。
その刹那、奈斗は彼女をきつく抱きしめた後、激しく口づけた。
そっと唇を離すと、銀色の糸が伸びていた。
「バカ。
俺は、離れてようが、有海さえいれば十分。
携帯電話も持てるようになったし、連絡もこれで取れる。
何なら、いきなり海外なんて、有海が危なっかしいから、俺も一緒に行ってやる。
そうしたら一緒に居れるだろうが。
……俺もさ、有海の相手が俺でいいの?
将来有望なピアニストになる娘を持つ、有海の両親から、平手打ちどころかグーパンチ喰らいそう。」
「私が嫌なの!
奈斗じゃなきゃ、嫌なの。」
今度は、仕返しとばかりに、有海の方から奈斗に深いキス。
この場所が空港じゃなくてホテルの部屋とかだったら、ベッドにダイブしてるな、このお二人さん。
奈斗のほうが、有海の耳元で何やら囁くと、名残惜しそうに唇が離れた。
「ラブラブなお二人さん。
時間だ。」
何故か蓮太郎の声が入っている。
「じゃ、奈斗。
先に行くね!
連絡、待ってるから!」
意外なほどアッサリと、それだけ告げて、有海ちゃんはキャリーバッグを引きながらゲートをくぐっていった。
……強いな、有海ちゃん。
俺も見習わないとな。
そんなことを思っていると、明るい声が場の空気を変えた。
「……将輝?
由紀だよ。
入っていいかな?」
……由紀か。
まさか、説得するために蓮太郎が呼んだのか?
「……どうぞ。
蓮太郎と、その弟、奈斗の弟もいるけど、それでもよければ。」
そう返事をすると、入って来た由紀は長袖の花柄ブラウスに、ベージュのスカートという服装だった。
スカート、履いてくるなよな?
どうやら、有海ちゃんの乗るイタリア行きの便が、奈斗のより先に日本を発つようだった。
ブルーのスーツケースを傍らに置いて、奈斗と向かい合う有海ちゃん。
ここまでは俺と同じだ。
最初に口を開いたのは、奈斗の方だった。
「有海、お前さ、両親から恋人候補を、いろいろ紹介されてるんだって?
……会ったりしてるのかよ、ソイツらと。」
……いきなり聞くなぁ。
「……会うわけないじゃん。
全部断ってるわよ、もちろん!
小さい頃からずーっと好きな人いるもん!」
ムキになって返すのは、由紀を彷彿とさせた。
「……ふーん、誰なの?それ。」
奈斗の奴、有海ちゃんから言わせる気だな。
……すると。
有海ちゃんが、そっと奈斗にキスをした。
「これで分かる?
好きでもない人にこんなことしないよ!
……好き。
何やってるのか分からなかった間も、どこかで会えれば、って思ってた。
それくらい、奈斗、貴方が好きよ。」
由紀にその積極性、分けてほしい。
奈斗は悔しそうに頭の後ろに手をやった。
「……チッ、好きな女に先に言われるってアリかよ。
俺も、好きだ。
有海のこと。
幼学部のときからずっと。
好きって言ってないのに、無理やりの行為とかヒドイことしたな。
それは、謝っても償いきれないや。
本当にごめんなさい。
帰ってきたら、今度こそちゃんと身体の隅々ま
で、本気で有海のこと、愛してやる。
こんな俺でも……好きで居てくれてたの、本当に嬉しい。
ありがとう。」
「……ううん。
昨日の夕方から賢正学園に居させてもらったのもすごい楽しかった。
スタッフの人、言ってたよ。
『奈斗くん、本来は優しい子なんです。
貴方の弾くピアノを聴きに行って帰宅すると、その様子をよく話してくれるわ。
貴方のそのピアノが、彼の音楽セラピーも兼ねてるのね。
ちょっとずつ、奈斗くんが心の奥底に隠していた彼自身の、本当の良い一面が、表に出てきているのを感じるの。
それは貴女のおかげなのね。』って。
私のピアノも、まだまだプロの領域には届かないから、もう少し上手くなる。
将来、私がちゃんとプロのピアニストになったら、海外と日本を行き来する生活になると思うの。
奈斗のこと、寂しくさせちゃう。
それでもいいの?
こんな私でも、いいの?」
奈斗は、泣きそうな有海ちゃんの額をデコピンで弾く。
その刹那、奈斗は彼女をきつく抱きしめた後、激しく口づけた。
そっと唇を離すと、銀色の糸が伸びていた。
「バカ。
俺は、離れてようが、有海さえいれば十分。
携帯電話も持てるようになったし、連絡もこれで取れる。
何なら、いきなり海外なんて、有海が危なっかしいから、俺も一緒に行ってやる。
そうしたら一緒に居れるだろうが。
……俺もさ、有海の相手が俺でいいの?
将来有望なピアニストになる娘を持つ、有海の両親から、平手打ちどころかグーパンチ喰らいそう。」
「私が嫌なの!
奈斗じゃなきゃ、嫌なの。」
今度は、仕返しとばかりに、有海の方から奈斗に深いキス。
この場所が空港じゃなくてホテルの部屋とかだったら、ベッドにダイブしてるな、このお二人さん。
奈斗のほうが、有海の耳元で何やら囁くと、名残惜しそうに唇が離れた。
「ラブラブなお二人さん。
時間だ。」
何故か蓮太郎の声が入っている。
「じゃ、奈斗。
先に行くね!
連絡、待ってるから!」
意外なほどアッサリと、それだけ告げて、有海ちゃんはキャリーバッグを引きながらゲートをくぐっていった。
……強いな、有海ちゃん。
俺も見習わないとな。
そんなことを思っていると、明るい声が場の空気を変えた。
「……将輝?
由紀だよ。
入っていいかな?」
……由紀か。
まさか、説得するために蓮太郎が呼んだのか?
「……どうぞ。
蓮太郎と、その弟、奈斗の弟もいるけど、それでもよければ。」
そう返事をすると、入って来た由紀は長袖の花柄ブラウスに、ベージュのスカートという服装だった。
スカート、履いてくるなよな?



