ラウンジから壁を隔てて離れた椅子。
そこにハナとミツも手招きして、同じ資料を見せる。
由紀ちゃんの名前に反応したのか、良太郎と勇馬くんも覗いてきた。
『……珠美 由紀《たまみ ゆき》。
母親が優秀なカウンセラー。
その手腕はアメリカからも引っ張りだこ。
非常勤ではあるが、日本の大学で教授もしている。
それに娘の由紀の世話など、3足のわらじを履いている。
娘もそれに憧れ、母のようになりたいと考え、早く高校を卒業してアメリカに行けるよう、単位制高校に進学する。
蒲田 華恵、御劔 優作、一木有海らとは中学の同級生。
当時は、中学の教師、富岡 孝平に好意を抱いていた。
しかし、それは本当の恋愛感情ではなく、彼が不幸な身の上だったから、同情心から好きだって思い込んでいただけだった。
そのうちに、アメリカで入学先の大学の下見や準備も兼ねたかったため、母の助手として浅川将輝《あさかわ まさき》のカウンセリングに参加。
彼の雑談相手になるうちに、彼の閉ざされた心を少しずつではあるが開いていく。
彼が、日本に帰ってから養護施設内で話すのは大抵彼女とのことである。
カウンセリングの手伝い中に高熱を出して倒れた際、彼に介抱された。
それ以来、段々彼のことを異性として意識し始めており、好意を抱いている節がある。
中学の同級生である有海が同じような心の内をを由紀らにサマーキャンプのときに語って聞かせている。
奇しくもここで当時の彼女の気持ちが理解できたようである。
なお、由紀は単位制高校に進学し、アメリカにいて母の手伝いをしていた分も単位として認めて貰えているようだ。
なお、3年間で取得するべき単位数はゆうに超えている。
そんな彼女は、今の高校2年生が終わったら、現時点で高校3年生の人と一緒に卒業できる。
そのことを現高3からも、同級生からもよく思われていないようで、いじめを受けている。
学校内の裏サイトに悪口が書かれているだけでは留まらず、どこから手に入れたのか、女子に高校の修学旅行先で隠し撮りされた裸の写真まで載せられているようだ。
これ以外にどんな仕打ちを受けているかは、現在も調査中である。』
資料を持つ手が、怒りでわなわなと震えるのが分かった。
「……許せない。
私の親友をこんな目に遭わせて。
そういうことだったのね。
ケータリング食べる前の会話、覚えてる?
由紀は学校に行かなくていい、って知って私は羨ましがったわ。
だけど、ミツがホントは行きたくないんじゃない?って言ったときに、そんなことない、みたいな返しをしたでしょ?
その際、彼女は目を伏せて横に動かした。
その仕草の後、私が着けてる腕輪に反応があったの。
レン、貴方の執事さんが気を利かせて調べてくれたのよ。
これは、今向かい合っている相手の僅かな緊張の動作に反応する腕輪みたい。
隠し事や嘘の核心に触れたとき、相手の動揺や緊張が動作に現れる。
由紀の場合は、目を伏せて横に動かす、みたいな感じに。
腕輪の使用者本人が腕輪の収縮を感じ取ることで、相手が隠し事をしている、と分かるそうなの。」
そんな力があったのか……
ハナが高校に上がる頃から身につけてる腕輪。
「由紀がそんな目に遭ってるなんて、全然気付かなかった。
何で気付いてあげられなかったんだろ。」
ハナは悔しそうに唇を噛んでいる。
ミツは、そんな彼女を優しく抱き寄せていた。
「……ハナ、お前が悔やんだところで仕方ないだろう。
中学の同級生だった頃とは違うんだ、親友が平穏無事に学校生活を送れてるかなんて知る由もないだろう?
離れてしまうと尚更な。
大事なのは、これから何ができるか、じゃないのか?」
ミツの言うことは正論だった。
いい台詞なんだけどな。
彼女を大事そうに抱き寄せながら言うと良さが半減する気がしてならない。
「オレも、アメリカで由紀ちゃんの助言には助けられた。
今度はオレが助ける番だ。
何とかならないか?武田。」
「……旦那さまのお望みなら、喜んでご尽力いたします。
宝月グループを甘く見ると痛い目に遭う、と分からせてやる必要がありそうですね。」
武田、人格変わってないか?
オレたちの一連の会話を、1人の男が柱の影から聞いていたことには、気付いていなかった。
「浅川様はしばらく安静にしている必要がおありのようですし、もう少ししたら様子を見に行きましょう。
それまで、皆さんで併設のカフェでお茶でも致しませんか?」
武田の提案に賛成することにして、何かあったら連絡するという由紀ちゃんはお留守番だ。
俺もパス、と言った奈斗は、有海ちゃんに引きずられるようにしながら着いていく。
皆で病院の外に併設のカフェに向かった。
そこにハナとミツも手招きして、同じ資料を見せる。
由紀ちゃんの名前に反応したのか、良太郎と勇馬くんも覗いてきた。
『……珠美 由紀《たまみ ゆき》。
母親が優秀なカウンセラー。
その手腕はアメリカからも引っ張りだこ。
非常勤ではあるが、日本の大学で教授もしている。
それに娘の由紀の世話など、3足のわらじを履いている。
娘もそれに憧れ、母のようになりたいと考え、早く高校を卒業してアメリカに行けるよう、単位制高校に進学する。
蒲田 華恵、御劔 優作、一木有海らとは中学の同級生。
当時は、中学の教師、富岡 孝平に好意を抱いていた。
しかし、それは本当の恋愛感情ではなく、彼が不幸な身の上だったから、同情心から好きだって思い込んでいただけだった。
そのうちに、アメリカで入学先の大学の下見や準備も兼ねたかったため、母の助手として浅川将輝《あさかわ まさき》のカウンセリングに参加。
彼の雑談相手になるうちに、彼の閉ざされた心を少しずつではあるが開いていく。
彼が、日本に帰ってから養護施設内で話すのは大抵彼女とのことである。
カウンセリングの手伝い中に高熱を出して倒れた際、彼に介抱された。
それ以来、段々彼のことを異性として意識し始めており、好意を抱いている節がある。
中学の同級生である有海が同じような心の内をを由紀らにサマーキャンプのときに語って聞かせている。
奇しくもここで当時の彼女の気持ちが理解できたようである。
なお、由紀は単位制高校に進学し、アメリカにいて母の手伝いをしていた分も単位として認めて貰えているようだ。
なお、3年間で取得するべき単位数はゆうに超えている。
そんな彼女は、今の高校2年生が終わったら、現時点で高校3年生の人と一緒に卒業できる。
そのことを現高3からも、同級生からもよく思われていないようで、いじめを受けている。
学校内の裏サイトに悪口が書かれているだけでは留まらず、どこから手に入れたのか、女子に高校の修学旅行先で隠し撮りされた裸の写真まで載せられているようだ。
これ以外にどんな仕打ちを受けているかは、現在も調査中である。』
資料を持つ手が、怒りでわなわなと震えるのが分かった。
「……許せない。
私の親友をこんな目に遭わせて。
そういうことだったのね。
ケータリング食べる前の会話、覚えてる?
由紀は学校に行かなくていい、って知って私は羨ましがったわ。
だけど、ミツがホントは行きたくないんじゃない?って言ったときに、そんなことない、みたいな返しをしたでしょ?
その際、彼女は目を伏せて横に動かした。
その仕草の後、私が着けてる腕輪に反応があったの。
レン、貴方の執事さんが気を利かせて調べてくれたのよ。
これは、今向かい合っている相手の僅かな緊張の動作に反応する腕輪みたい。
隠し事や嘘の核心に触れたとき、相手の動揺や緊張が動作に現れる。
由紀の場合は、目を伏せて横に動かす、みたいな感じに。
腕輪の使用者本人が腕輪の収縮を感じ取ることで、相手が隠し事をしている、と分かるそうなの。」
そんな力があったのか……
ハナが高校に上がる頃から身につけてる腕輪。
「由紀がそんな目に遭ってるなんて、全然気付かなかった。
何で気付いてあげられなかったんだろ。」
ハナは悔しそうに唇を噛んでいる。
ミツは、そんな彼女を優しく抱き寄せていた。
「……ハナ、お前が悔やんだところで仕方ないだろう。
中学の同級生だった頃とは違うんだ、親友が平穏無事に学校生活を送れてるかなんて知る由もないだろう?
離れてしまうと尚更な。
大事なのは、これから何ができるか、じゃないのか?」
ミツの言うことは正論だった。
いい台詞なんだけどな。
彼女を大事そうに抱き寄せながら言うと良さが半減する気がしてならない。
「オレも、アメリカで由紀ちゃんの助言には助けられた。
今度はオレが助ける番だ。
何とかならないか?武田。」
「……旦那さまのお望みなら、喜んでご尽力いたします。
宝月グループを甘く見ると痛い目に遭う、と分からせてやる必要がありそうですね。」
武田、人格変わってないか?
オレたちの一連の会話を、1人の男が柱の影から聞いていたことには、気付いていなかった。
「浅川様はしばらく安静にしている必要がおありのようですし、もう少ししたら様子を見に行きましょう。
それまで、皆さんで併設のカフェでお茶でも致しませんか?」
武田の提案に賛成することにして、何かあったら連絡するという由紀ちゃんはお留守番だ。
俺もパス、と言った奈斗は、有海ちゃんに引きずられるようにしながら着いていく。
皆で病院の外に併設のカフェに向かった。



