おいおい、何だか日本のDNA検査で異母兄妹だと分かった柏木さんや伊達さんのこと、笑えないな。

オレらも大概じゃねぇか。

「とにかく、探すか、遺言書。」

地下の金庫にあるというので、探しに行こうと部屋を出る。
すると、ちょうど部屋に入ろうとしていた祖父とぶつかった。

「じいちゃん、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。
ところで、これを探してたのかな?」

じいちゃんは、俺に封筒を差し出した。

封筒の綴じ目のところには印鑑が捺印されていて、表面には遺言書の文字と親父の名前が書かれている。

これかよ、遺言書。

『宝月グループ』の後継者として、宝月 蓮太郎を指名する。

後継者になった者は、財産も全て所有の銀行口座に移してよい。
また、その他私の持つ資産も自由に使用してよい。
この遺言を読んだ瞬間から、財産や資産を管理する義務を負う。
財産や資産の詳しい内容は、書斎にあるエンディングノートを参照すること。』

……。
え?
この瞬間から、って。
まだ未成年なんだけど?

資産も財産も、かなりあったぞ。

書斎に戻って、エンディングノートがあった棚のファイルボックスを見てみる。
『宝月家のあゆみ』という表題の分厚い冊子。

それによると、不動産以外のあらゆる業種を傘下にしているようだ。
不動産、どこかで補完できないかな。

……そこで、ある考えが浮かんだ。
ちょうど、昨日メイに話したことだ。
確か、伊達さんの異母兄の柏木さんが、柏木グループを継ぐべく、経営権を少しずつ譲渡されているという話を聞いた。

柏木グループは不動産にはめっぽう強いが、それ以外の業種はからっきしだ。
宝月グループも、不動産だけは強くない。

来年には建て替える予定の宝月家の屋敷に関しても、管理等のアドバイスをもらえるはず。

「何か、いいアイデアを思いついたみたいね、蓮太郎。
さすが、私の弟ね。」

「まぁな。
上手くいくかは、分からないけど。」

「どんどんやってみるといいわよ。
常に宝月グループがどうしたらもっと良くなるか、を考えるといいわよ。
困ったらいつでも連絡をちょうだい。
助けになるわ。」

「ありがとう、姉さん。
嬉しいし、助かるよ。
姉さんが味方で。」

そんな話をしていると、部屋のインターホンが荘厳な音を立てて鳴った。

巴姉さんは、あら、来たわねと平然と言ってのける。誰?

「わぁ!
蓮太郎とお姉ちゃんだ!久しぶり!」

オレには目もくれず、巴姉さんに抱きつくのはオレの2番目の姉、茜《あかね》だ。

高い位置でのハーフアップ。
いつもは動きやすいパンツルックが多いが、今日はグレーのレースマーメイドスカートに、ミントグリーンのブラウスだ。

それにしても、少しは久しぶりに会った弟のことも気にかけてほしい。

「なんでここに?茜姉さん。」

「お姉ちゃんと蓮太郎に会いたかったからさ、日本に帰る前に。」

オレより先にカガク捜査官になれた姉さんは、お世話になったこっちの人にお礼を言いに帰ってきたらしい。

そういうことか。