ボーダー

彼女の部屋のドアを軽くノックした後、声をかける。

「メイ、いる?夕御飯出来たぞ。」

入ろうとしたが、躊躇せざるを得なかった。
メイの部屋からすすり泣く声が聞こえるのだ。

「パパ……
ひぐっ……ごめんね……」

メイ……泣いてる?

また……1人で泣いてんのかよ……

泣くなら、オレの前でだけ泣いてくれ。
可愛い泣き顔を、他の男に見られるなんてまっぴらごめんだ。

音を立てないよう……静かにドアを開ける。

「……メイ?」

オレの声に驚いたらしいメイは、弾かれたように、オレを見た。
薄いキャミソールワンピースは、下着を着けなくても着られるようにカップが入っているらしい。
その無防備な姿は、どうしてもそういう行為の前後を連想させた。

「れん……
ふぇっ……」

もはや、オレの名前すら呼べていない。
その様子も可愛くて、ぎゅっと抱き締めた。

行為前後を連想したことに加えて彼女を抱き締めて膨らみの感触を感じたことで、余計に下半身が制御しづらくなっている。
もう知るか。

「どーした?メイ。
話なら聞くよ?
ゆっくりでいいから、話してみ?」

「私、分かっちゃったっ……
真相を追求するスタイルの検事として、これから……やってきたい……

パパ……えっと……
もう……この世にいない人の背中を、追うのはやめる……!
自分らしい、検事になるの……!」

それを言うと、声を押し殺して泣いた。
その背中を、優しく叩いてやる。
泣いてる子供に、よく母親がそうするように。

メイは、怖かったんだと思う。
自分のスタイルを180度変えることで、父親の存在がなくなるんじゃないかって。

「メイの父親は、ちゃんとここで生きてるって。
……心配するな?
メイらしい、いい検事になれるように、オレが側にいてサポートしてやれれば、いいなって思うからさ。」

そう言って、メイの胸元を指差す。
指を指すだけで留められたオレを誰か褒めてほしい。

一瞬だけ泣いてるメイの額に口づけてから、部屋を出た。

メイにはもう少し……気の済むまで泣かせておいたほうがいいと思ったから。
泣かないとしても、俺がいては邪魔だろう。

リビングに置いてある料理にラップを掛けてから、風呂に入るべく浴室に向かった。

シャワーを浴びながら、先程メイに言った言葉を思い返す。

『オレが側にいてサポートしてやれれば、いいなって思う』って……深読みする奴なら告白とほぼニアリーイコールと思うんじゃないか?

まだまだ、オレもズルいやつだな。

そんなことを思いながら、いつもより念入りに頭や身体を洗う。

微かに、さっきメイの額に口づけた時、微かにオレの耳元に口を寄せて、抱いて欲しい旨の言葉を言われたことを覚えている。

メイ、お前がそう望むなら、構わない。
オレの方も、本気で抱く。
ハナが無理矢理犯されたときも、彼女の中に残る嫌な傷を消すことは出来なかった。

そのリベンジをメイでしようなんて、到底思っていない。

入浴を終え、深く深呼吸をしてからタンクトップにパーカー、スエットの下を着てリビングに向かう。
ちょうどメイが部屋からリビングに続く階段を降りてきたところだった。