<ハナside>

校外学習「若あゆ」当日。

バスの中は騒がしく賑やかだった。

施設に着くなり、いきなりの作業の数々。
その中でみんな徐々に、親睦を深めていく。

カヌーでは、オールを漕ぐときにミツと手が触れて、心臓の音がうるさかった。
それにドキドキしたから、動揺して川に落ちてしまった。
ミツが助けてくれて、何も言わずにタオルを渡してくれた。

下に目をやると、スポーツブラがうっすら透けていた。
気付いてて、これで隠せ、って意味でタオルをくれたんだろうな。

早川 守《はやかわ まもる》。
同じ班の男の子。
いつも集合時間に遅れてくる子。

誰かを探していたっぽい。

探しているのが誰なのかは、今後知ることになるなんて、当時の私は思いもよらなかった。

ピザ作りなどを終え、1日目終了。
1日目の夜、ミツが血相を変えて部屋に来いと言う。
眠い目を擦りながら付いていくと、みんなが平然とウノをやっていた。

「ちょっと、血相変えて来るから、何事かと思ったじゃん!
ヒヤヒヤしたんだけど!」

文句を言いながらも、ウノは進んでいく。

私とナナも参加。

こういうの、ホントはいけないんだけどね。
男女が遊びといえど同じ部屋にいると、いろいろ問題が起こるかもしれない、って。

男女差をいい意味でも悪い意味でも意識する年頃だしね?

……案の定、先生に見つかった。

「すみません!食券を間違えたとかって、言い争い始めちゃったんで、仲裁してたんです!
もう済んだことなのに……」

私の必死の口実でごまかし、事なきを得た。

「おお、そうか。
まぁ、女子を巻き込むのも程々にしろよ。
霧生と蒲田は早く自分の部屋戻れよー?

そして男子!早く寝ろよ!」

そう言って、先生は去っていった。
先生が何にも勘付かないニブイ人で助かった。

2日目のキャンドルファイヤーのとき、ミツからこの12年間、思ってもみなかったことを聞かされた。
スタンツ(出し物)のダンスを踊る前、肩に力が入っていたらしい。

ミツによると、私は不安になったり緊張したりすると肩に力が入って、体がビクつくらしい。

私の昔からのクセなんだそうだ。

ミツはさすが、わかってるよなぁ。

第一印象はクールで怖そうな印象だったけど、優しくて、しっかり者で。

いつも、隣にいる私を優先して物事を考えてくれる。
傍らの炎のせいかな?
彼が、いつもよりカッコよく見えたの。

……こんなコトを考えている自分にちょっと驚いた。

もしかして私、ミツのこと……

幼なじみとしてじゃなくて、

ちゃんと男の子として見てる?

好き……なのかなぁ……。

分かんないや。

うん!

"好きなのかもしれない"ってことにしとこう!