布団を敷き直している彼に、4年前もこんなふうにして、寝ていたことを覚えているか聞いてみたが、反応は薄かった。

「懐かしいなぁ。
4年前も確か、こうやって寝てた。
私がベッドで、蓮太郎が布団。
あの頃は、何も考えずに寝れたのに。

あの頃は、早く大人になって、蓮太郎に似合うような女の子になりたかった。
だからちょっとでも、側にいて蓮太郎のクセとか知りたかったんだよね。」

「そうだっけか。
もう、4年も前になっちゃうのか。」

その頃から、私は蓮太郎のこと、男の人として意識してたのにな。
蓮太郎は……そうじゃなかったのかな。

「メイはさ、まさか……検事辞めたりとか……しないよね?」

「いろいろ迷ったりはしているの。
だけど、辞めるほどじゃないわ。
まだ全然……宝月検事みたいには……なれていないから。
大人の女性としてもね。
彼女には憧れてるのよ。」

あの人みたいになれれば。

普段は泰然としているけれど、選ぶ言葉や仕草のひとつひとつに知性が滲み出ている。

そんなふうになれれば、蓮太郎の隣に並ぶのに相応しい女性として、愛情を注いでくれるだろうか。

ちゃんと恋人になった暁には、抱いてくれるだろうか。

……?

ふと、蓮太郎の顔を見ると、何かを考えているような感じだった。

それは、朝、検事局のニュースをやっていたときと同じ表情で。
……巴さんの名前を出した瞬間から、こんな表情になった。
巴さんと……何かがあったんだ。

分かるよ?

蓮太郎のこと……ちゃんと1人の男の人として好きだもん。
好きだからこそ、好きな人の全てを知りたいって思うの。

言わないのなら、無理やりにでもキッチンに置いてあった、村西さんが作ったであろうノンアルコールの、あのカクテルを飲ませて聞き出すつもりだった。
あれには……何か秘密がある。
それだけは……わかっていたから。

「蓮太郎……私……」

「メイ、今日疲れたろ?
オレももう寝るから、メイも早く寝ろよ?
おやすみ。」

『蓮太郎。
……私、知りたいの。
宝月検事さんとの間に何があったの?
私は……辛いことを蓮太郎には話したのに。
私には……話してくれないの?

聞くしかできないけど聞くよ。
蓮太郎の力になりたい。』

蓮太郎にそう言おうとしたけど、本人の言葉が重なった。
その結果、蓮太郎本人の言葉を優先したから、言い出せなかった。

……情けない。

私は、蓮太郎の言葉の全てを受け止めて、受け入れる覚悟はある。
どんな言葉がきても構わない。
そんな覚悟でいるのに。

蓮太郎になんとか、男のスイッチを入れてほしかったけど、色っぽく誘うなんて、まだ未成年には早すぎたかな。

頭を優しく撫でてくれたのは、恋人になったらこうされるんだろうな、という気分を味わえて嬉しかったけど。

それについては明日知ることになるなんて知らずに、私は意外なほど穏やかに眠りについた。

同じ空間に好きな人がいるだけで、こんなにもすぐに寝付けることを初めて知った。