「あ、蓮太郎、先お風呂入れば?
私、洗い物してから入るから。
着替えは適当に置いておくね?」

「……ん。ありがと。」

ソファーで適当に新聞を読むオレにそう声をかけたメイ。
何だこのやり取り。
新婚生活始めたばかりの夫婦感が滲み出てる気がするな。
そんな生活を一瞬想像して、つい顔がニヤけてしまう。

メイに短くそう言って浴室に向かおうとしたオレをメイが慌てて引き止めた。

「あっ!
言うの忘れてた!
蓮太郎、明日……一緒に来てくれる……よね?」

「言われなくても行くつもりだったんだけど?
また今日みたいに話してる最中に泣いたら、オレしか頼る人いないだろ?
メイが可愛すぎるから、行く途中で襲われたら困る。」

最後のほうは、わざと声のボリュームを下げて言ってみた。
だからなのか、本人には聞こえていなかったらしい。
残念なような、聞かれなくてよかったような。

「……何?」

「なっ……何でもないよ。
お前が可愛いって話。」

「ちょっとなにそれ!
明日のことと、どこが関係あるのよ!

もう、蓮太郎ったら!」

メイの可愛い抗議は聞こえないフリをした。

「ムキになるところも可愛い。
歳相応の高校生らしくていいよ、そのほうが可愛いから好きだ。」

それだけをメイに言う。
案の定、顔を真っ赤にして俯いているメイ。
そんな彼女を横目で見ながら、リビングのドアをゆっくりと閉める。
手をひらひらと振って浴室に向かった。

好きだ、は今言うことじゃなかったかな?
でも、これがメイへの本当の気持ちだ。

年相応以上に、背伸びなんてしないでいい。

村西さんや遠藤さんが一緒にいると、大人の対応が必要になるときもあるだろう。
歳相応以上の応対をせざるを得ないところもあるのは分かっている。

ただ、俺の前では年相応の、17歳らしい可愛い姿を見せてほしい。

どんなメイでも、構わない。
オレが支えて受け止めてやるよ。

服を脱ぐと、浴室の全身鏡にオレの裸体が写し出される。
少なくとも、同年代の男よりは鍛えてあるはずだ。

合気道や柔道は、すこしだがかじっている。
学校の施設にあるジムも、ほぼ毎日利用している。
メイを無理やり犯したという男は、オレよりいい身体をしていたのだろうか。

何より、メイを満足させられただろうか。

おっと、あまりメイのことを考えすぎるとまずい。
抑えきれなくなる。

オレは知らない。
帰国したら、その男と深く関わることになることを。