バレンタインもホワイトデーも終わったある日のこと。

チャイムが鳴るギリギリに、教室に駆け込んできた友佳。
彼女の首筋には絆創膏を貼られていた。

うっすら、目の下にクマが出来ている。
いつも早起きの友佳にしては珍しい。

「……友佳?
それ……どうしたの?」

おそるおそる聞いた愛実。
友佳の隣にいた一成くんがニヤリと意味ありげな笑みを浮かべる。

ま……まさかまさか……

「キスマーク?」

愛実と麻紀と私の声がハモる。

一成くんにたっぷり愛されたようだ。

「麻紀とハナの言ってた通りだった。
血は出たしまだ痛い。
でも、最高に幸せだね!」

「ノロケるなー!」

「でしょ?
そのうち慣れるよ。
頻度にもよるけど。」

ホワイトデーの日には、麻紀が真くんにバージンを奪われたらしい。
その翌日は、脚を引きずるようにして歩いていて、体育も欠席していた。

そんなこんなで、毎日の授業や部活、時には試験に追われながら、日は過ぎて行った。

今日は……球技大会の日。
授業をサボれるとあって、皆ハイテンションだった。

男子は、バスケとサッカーとドッジボール。
女子は、バスケとバレーとドッジボール。

私と麻紀と愛実と友佳は、仲良くバレー。
ミツとレンはドッジボール。
……厄介なのは、2年生の先輩と戦わなくちゃいけないってこと。

……ちょっと怖いなぁ。

だけど、順調に勝ち進んだ。
私たちのクラスは女子のバレーボール、男女のドッジボールではそれぞれ準優勝、女子バスケでは優勝できた。
そのおかげで総合2位だった。

レンがかなりドッジボールで人を当てまくったらしい。

海を越えた向こうにあるアメリカにいる間に、いろいろ鍛えられたのも一因だろう。
しかし何より先輩方が、蓮太郎が特待生かつ留学生扱いをされていることが、気に入らないらしいのだ。

先輩方のクラスの人間は、執拗に蓮太郎ばかりを狙い、わざと目や顔なども狙ってきた。

その様子を、蓮太郎がジャージにつけている機械、盗音機が記録していた。

レンから機械を借りた私とミツ。
体育の先生にその映像を見せると、先輩のクラスは反則となった。

結果、ドッジボールでは準優勝ができた。

教師からのささやかなプレゼントとして、アイスがクラス全員に奢られた。

「頑張った後には甘いものだね!」

「疲れが癒やされる……」

「先生太っ腹だね!」

友佳や麻紀と談笑しながらアイスを食べていると、皆からの死角になる場所へと呼ばれた。

呼んだのはミツ。

一瞬だけ、舌が絡まるキスをされて、ソーダ味のアイスの味がした。
これ、口移し、ってやつ?

「オレからのご褒美。」

「イチャつくなよ、そこ!」

「誰かさんたちが熱いくらいだから、アイス溶けちゃう。」

レンや、麻紀の彼氏の真くんにさんざん冷やかされた。