ボーダー

事情聴取が終わった後、時任は俺のことを小突いて言った。

「彼女さんでしょ?
ラブラブする予定ならいいっすよ、車使って。
俺、今日夜勤ですから。」

「いいの?遠慮なく使わせてもらう。
明日の朝には戻るわ。
ま、後30分後には彼女になるけど。」

時任の好意にありがたく甘えて、車で2人の思い出の海に向かわせてもらった。

「正義感が強いのはいいけど、程々にねって言われたのは、なんとか堪えたけど吹き出しそうになったわ。
変わってないのな、志穂。」

「いや、逆に180度変わってたら怖くない?
変わってないのはむしろいいことじゃない?」

「そういう、変にポジティブなところも変わってないよな。

「懐かしいなぁ……
ここでいろいろ……進路の話とか部活の話とか話聞いてもらったよね。
ここで康一郎にヒドいこと言っちゃったりもしたけど。
……あの時はごめんなさい。」

別に、俺もいろいろひどいこと言った記憶はあるし、お互い様だ。

「ん?こうして謝ってくれたんだから、俺が許さないワケがないでしょ?
しかも、もう時効だと思ってるし。
あれから何年経つんだよ。

……それで……順調なの?
……彼氏とは。」

しばしの沈黙の後、あっさりと返事が帰ってきた。

「ん?
別れた別れた!
だって嫉妬心激しすぎるんだもん。
お父さんと電話してただけでキレて平手打ちは当たり前なんだよ?
合気道じゃない、空手とかジークンドーとか習っておけばよかった、って何度後悔したか。

そんなヤツ、あたしの手には負えないよ。
別れて正解だった。」

1度言葉を切って一呼吸置いてから、話し出す志穂。

「それに……高校の頃から好きな人いるもん。

……さっきは、ありがとう。
カッコ良かったよ?
ありがとう、康一郎!
私、康一郎のこと大好き。

改めて言うのも、何か変な気がするけど、
高校の頃からずっと好きでした。

苗字、柊から柏木にする前提で、付き合ってください!」

志穂の方からそう言ってくれたことへの喜びと驚き。そのせいで、変な声が出てしまった。

「はへ!?
俺なのかよ!」

まぁ、いいか。
なんとなく、わかってた、というか、こうなることを望んでいたし。

「俺も好きだ。

志穂?
ずいぶん……遠回りしたけど……
俺と付き合ってくれますか?

あ、もちろん、数週間後でも数ヶ月後でもいいけど、絶対苗字は柏木な?」

当然でしょ、とでも言いたげに俺を上目遣いで見上げる姿も……可愛すぎる。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

強く、志穂を抱きしめる。

―ちゅっ……

志穂の方から、唇を重ねてくる。

俺もそれに応えるように、唇を重ねた。

……大切にするからな?

……志穂。

徐々に唇の重なりが深くなる。

「志穂?
……場所変えるか。」

容赦なく志穂を抱き上げて、時任の車の後部座席に乗せる。

「志穂、今寝とけ?
寝かせる気、ないから。
大人な夜の過ごし方、教えてやる。」

手近なホテルに、車を走らせた。