一なる騎士

 あきらめてしまうのかと、そんな簡単にあきらめてしまえるほどの思いだったのかと。

 そして、サーナはすぐには無理でも今度こそはリュイスの役に立てる存在になろうと決心したようだった。

確かに彼女たちの強さは敬服に値する。
しかし、クレイドルは彼女たちよりももっと先を見通す力ゆえに絶望していた。

「さぞや満足でしょうね?」

「なんのことだ?」

「姫君は失われた。もうこの世のどこにもいない。リュイスは、『一なる騎士』は選ぶべき王を見つけられない。彼はあの姫以外を決して王として選ばないでしょう。『大地の剣』は王を持たないまま放置される。しかも剣は王自身の手によって変質してしまっている。もう豊穣など望めない。あれは呪いの剣だ。そう、ついに世界の仕組みは壊れた。貴方の望んだ通りに」

 振り絞るように漏れた言葉は期せずしてエイクへの糾弾となった。
 かつてリュイスに『大地の剣』を破壊しろとそそのかした彼へと。

 しかし、あいかわらずエイクは飄々とした態度を崩さない。

「八つ当たりか。筋違いな非難はお前らしくないよ、坊や」

「そうですね。僕はけっきょく何もできなかった。自分の無力が悔しくてならない。世界はやがて滅んでしまうというのに」

 いくら聡くても彼にもわからないのだろう。エイクは所詮精霊使いでもなく、精霊の視力を持つわけでもない。