一なる騎士

「約束?」

 サーナの青灰色の瞳が彼を見上げる。何を言っているかわからないと言った風だった。いや、わかりたくないのだろう。だから、リュイスははっきりと告げた。

「もう私を待ってくれなくていい」

「どうして、そんな……」

 リュイスの言葉にサーナの眼差しが揺れる。瞳が涙に潤みかける。
 しかし、それでも彼に出来ることはさらに冷たい言葉を投げかけることだった。彼女が自由になれるように。

「姫君を探す。君の存在は邪魔なだけだ」

「邪魔……」

 サーナは地面に膝を落とす。がっくりとうなだれた彼女の肩に見かねたかクレイドルが慰めるように手を置く。それを横目にリュイスは踵を返した。

 二度とは振り返らなかった。

 今はただ決して失ってはならない存在を取り戻すだけだった。
 セラスヴァティー姫を探す。

 それが今『一なる騎士』としてリュイスにできる唯一のことだった。