「陛下!」
側の王妃がはげしい金切り声をあげて、まだほんの赤子の王子を抱いたまま王の遺体にとりすがった。母親に呼応するかのように抱かれた赤子が甲高い泣き声をあげる。
その一切をさして驚いた様子もなく眺めていたリュイスは、確かな足取りで壇上にあがってきた。
『大地の剣ルイアス』を道を誤った王より取り戻すため。
真の王に大地の剣を引き渡すため。
「邪魔だ」
まぎれもなく悲嘆にくれる王妃を前にして、リュイスは低くつぶやいた。王の遺骸に突き刺さる『大地の剣』を回収するためだけではなく、彼らの存在はセラスヴァティー姫を王位につけるためにも障害となる。
(『ならば排除せよ』」)
側の気配が、今や深く馴染んだ気配が、甘く囁く。
リュイスは己の剣をふり上げた。背後の気配に気づいた王妃が振り返る。信じられないとでも言いたげに王妃の青い瞳が見開かれる。しかし、リュイスは瞬時も躊躇わなかった。
まだ乳飲み子に過ぎない王子ごと王妃を切り捨てる。無造作と言っていいほど迷いのない挙措だった。王座は新たな血溜りに染まった。
「やめろ!」
とっさに止めようと横合いから飛び出した兄王子が、リュイスに討ちかかってきた。果敢だか同時に無謀すぎる行為だった。王子の手にあったのは礼装用の華奢な装飾剣にすぎない。
また十歳にもならず特に優れた剣才があるわけでもない彼が、騎士であるリュイスに適うはずがない。あっという間に王子の剣は弾き飛ばされ、無防備な胴を横なぎに払われた。
鮮血が吹き上がる。ろくに声を上げることもなく絶命した少年の身体は、そのまま壇上から落下し、血溜りを作る。
しかし、リュイスは哀れな最期を遂げた王子に一瞥も向けようとはしなかった。
彼の目的はただ一つ。
『大地の剣ルイアス』である。
側の王妃がはげしい金切り声をあげて、まだほんの赤子の王子を抱いたまま王の遺体にとりすがった。母親に呼応するかのように抱かれた赤子が甲高い泣き声をあげる。
その一切をさして驚いた様子もなく眺めていたリュイスは、確かな足取りで壇上にあがってきた。
『大地の剣ルイアス』を道を誤った王より取り戻すため。
真の王に大地の剣を引き渡すため。
「邪魔だ」
まぎれもなく悲嘆にくれる王妃を前にして、リュイスは低くつぶやいた。王の遺骸に突き刺さる『大地の剣』を回収するためだけではなく、彼らの存在はセラスヴァティー姫を王位につけるためにも障害となる。
(『ならば排除せよ』」)
側の気配が、今や深く馴染んだ気配が、甘く囁く。
リュイスは己の剣をふり上げた。背後の気配に気づいた王妃が振り返る。信じられないとでも言いたげに王妃の青い瞳が見開かれる。しかし、リュイスは瞬時も躊躇わなかった。
まだ乳飲み子に過ぎない王子ごと王妃を切り捨てる。無造作と言っていいほど迷いのない挙措だった。王座は新たな血溜りに染まった。
「やめろ!」
とっさに止めようと横合いから飛び出した兄王子が、リュイスに討ちかかってきた。果敢だか同時に無謀すぎる行為だった。王子の手にあったのは礼装用の華奢な装飾剣にすぎない。
また十歳にもならず特に優れた剣才があるわけでもない彼が、騎士であるリュイスに適うはずがない。あっという間に王子の剣は弾き飛ばされ、無防備な胴を横なぎに払われた。
鮮血が吹き上がる。ろくに声を上げることもなく絶命した少年の身体は、そのまま壇上から落下し、血溜りを作る。
しかし、リュイスは哀れな最期を遂げた王子に一瞥も向けようとはしなかった。
彼の目的はただ一つ。
『大地の剣ルイアス』である。

