一なる騎士

「おおっ! なんという……」

「酷いことを」

「冒涜だ、女神への冒涜だ!」

 大地の剣ルイアス。
 太古の昔、降臨した大地の女神によって授けられた剣。

 荒ぶる精霊たちを鎮め、豊穣をもたらし、大地とその民との強き絆となる聖なる神具。
 決して武器として使うものではない。まして血に穢れるものでもない。

 それが今や王自身の胸にはえていた。否、突き立っていた。
 剣の柄に埋め込まれた金色の宝石が、王の血を啜ったかのようにたちまち赤変した。
 不吉な血の色へと。王の即位の儀には輝かしい金の光を放っていたと言うのに。

「呪いあれ! 呪いあれ!」

 王は哄笑しながらも叫んだ。
 己の胸に剣を突き刺したと言うのに、どこか楽しげな恍惚とした表情で。
 この時を待っていたかのように。

「うははははっ! うっ……」

 呪詛をいとも簡単に撒き散らした王の口から、鮮血がごぼごぼと溢れ出した。口元を伝い胸元を汚す。純白の王の正装は今や己の血に染め上げられ、彼はそのまま王座に崩れおれた。

 たとえ道を誤った王とは言え、剣との絆が断ち切れていない以上、王は王。『大地の王』の異変を感じたか、遠く大地が不気味に鳴動し、広間が震動した。