一なる騎士

「我は『一なる騎士』。王の守護者にして審判者。道を誤った王を断罪するもの。酒色に溺れ、大地の豊穣を願わぬなどすでに王ではない。故に、女神の名において退位を要求する」

 単刀直入な間違いようもない宣告だった。
 王は答えなかった。ただ冷たい眼差しをリュイスに投げかける。炎も凍るような。

 しかし、リュイスもまた王の視線をたじろくこともなく受け止める、強靭な意志を感じさせる眼で。

 瞬時、二人はにらみ合った。

 ふと王の唇がかすかに動いた。酒に焼かれた喉から出たのは、耳障りなしゃがれ声。

「渡さぬ。私が王だ」

 とたん、王の手にした『大地の剣』が閃いた。

 紅い鮮血が噴きあがった。肉を抉り、骨を砕く耳障りな音がしんと静まりかえった『王の間』に響き渡った。

 瞬間、広間に詰めかけたものたちが息を飲んだ。ついで悲鳴じみたどよめきが上がる。怒りと畏れが入り混じったような。