一なる騎士

「サーナ、サーナ。セスって、ほんとになんて子なの。ついたわ、ちゃんと行きたかったところに」

「どうして、わかるの」

 サーナの問いにアディリが微笑む。どこか得意げで誇らしげな笑み。咲き誇る花のような。そしてそれはサーナにはじめて向けられた彼女の本物の笑顔でもあった。

「精霊たちが教えてくれたから」

「それなら姫様はどこにいるの? どこにいったの」

「あの子のお父様のところに」

 返事に迷いはなかった。

「まさか、お城……」

 サーナは息を呑む。

 どうして。
 どうして、そんなにまでして。

 堅固な結界を打ち壊してしまうほどに思いつめていたのか。
 否、それは愚かな問い。

 王城は姫の家。そして、姫の愛して止まぬ家族の住まうところだ。
 父に愛されていないと感じていても、決して父を愛することをやめなかった姫だ。
 帰りたくなかったはずはない。

 あの聡い姫は決してそんなそぶりなど見せなかったけれど。
 きっとずっと焦がれていたはずだった。
 でも、なぜ今になってなのか。

 きっと王宮は混乱の最中なのに。
 それどころか……。

 最悪の想像にサーナは身震いする。
 それだけはどうあっても、あってはならないことだ。