一なる騎士

 瞬間、強い光と風があふれた。
 あまりのまぶしさにサーナは片腕を上げて、目をかばった。

 髪とスカートが後ろに激しくなびく。
 そして、光と風がやんだとき、子ども部屋に姫の姿は見えなかった。

 アディリがただぼうぜんと立ちすくんでいる。

「姫様は、姫様はどこ?」

 サーナの悲鳴にも近い問いに、少女はどこか覚束なげな視線を向けた。

「セスは、あの子は行ってしまった、精霊たちと」

 奇妙に抑揚のない声が答える。
 がっしゃん。
 サーナは盛大な音をたてて、茶器ごと盆を取り落とした。

「そんな、そんなはずないでしょう。ここは精霊たちから守られている。彼らは入ってこれない。力を及ぼせない、そう言ったのは貴女でしょう」

 サーナの糾弾にも似た言葉にもアディリは動じないようにみえた。あいからず抑揚のない声が答える。

「強く、強く願ったから。あの子の強い思いが、精霊たちに結界を壊す力を与えた。そして、連れていった」

 落とした茶器の破片など構わず、サーナはアディリに一足飛びに近寄った。どこか反応の鈍い彼女に業を煮やし、肩をつかんで思い切り揺さぶる。

「どこに、どこになのっ!」