アリアに手を引かれて広間に入ったとたん、レイルの視界が閉ざされた。しかもなにかとてつもなく重いものがのしかかってきている。

「おお、レイル。僕の愛しい子」

 父のエイクであった。

「父上? 苦しい」

「なんと薄情な子よ。今生の別れとなるかもしれないというのに」

「コンジョウノワカレ?」

 まだ幼い少年は意味のわからない言葉を繰り返す。ただ、どこか気に障る響きがあった。

「そうだ。僕はついに悪い王様をやっつけるために旅立つのだ。行く手に待ち受ける幾万の敵と戦うのは……」

 父の延々と続きそうな話を遮って若々しい声がかけられた。

「君がレイル?」

 首に父を抱きつかせたままレイルは声の主に目を向けた。