一なる騎士

「今はまだ幼いとはいえ、大地の真の主であるほどのものだと言うならば、君のやることをいずれは理解するだろう。理解できても許してくれるかどうかは、いや理解できるからこそ許してくれないかも知れないけどね」

 リュイスとて真の王を即位させるため、現王を、姫の父を、手にかけることになるかも知れないことは、すでに覚悟していた。

 そのために姫を悲しませること、そしておそらく恨まれることも。

 大地と王を心中させるわけには行かない以上、いたしかたのないことだ。

 しかし、その先に起こること。せねばならぬこと。それは、自分にも幼い姫君にもあまりにつらすぎることだから、考えないようにしていたこと。それを今この男は暴こうとしている。淡々と容赦なく。

「言っておくけど、別に僕は彼らを殺せとはいってはいない。社会的に抹殺できればそれでいい。だが、場合によっては彼らの命を奪うことも覚悟しておくべきだ。あの姫はあまりに類稀れ過ぎる。とうてい傀儡などになり得ないことは、父だってわかっている。小器用に立ち回るすべを知らない君が、なし崩し的にまたも不本意な王を選んでしまうことが目に見えるようだよ。そうなる前に、不安要素は取り除いておくことだ」

 彼の異様な外見からは考えられないほどに明晰で的確な分析は、リュイスを追いつめていく。漆黒の瞳に脅えにも似た光が浮かぶ。地面に下ろした手が、いつのまにか下ばえを握りしめていた。

「でなければ、父を、セイファータ公爵を先に排除するかい? しかし、彼はまだ有用だろう? 僕は父の代わりをするにはさすがに少し芝居が過ぎたようだ」

 自分の父親の命を平然と差し出して見せた後、ふいにエイクの鋭い眼光がやわらいだ。