しかし、些細なでっちあげで縁を捏造しなくては、
結衣のようなポジションの女には接点が生まれないため、
そうなると、計算は素直な努力のだけで、決して悪い先入観を持つべきではないはずだ。
年期の入った近藤の電子辞書より、結衣の方が高校入学を機に買ったものなので登録単語数が多いし画質も綺麗なのだけれど、
彼のそれを使った方が頭が良くなる気がした。
家庭科と国語と音楽以外は苦手で、英語は数学の次に嫌いなので、
いつもは爪磨きをするか、携帯電話のゲームをするか、ぼんやり暇つぶしに徹底気味な結衣だが、
好きな人に借りたアイテムがあるなら楽しく頑張れた。
それを人は単純だと言うが、彼女の場合は無邪気だと呼んであげることにしよう。
やたらと単語を調べる。
理由は至ってシンプルだ。
近藤が履歴を見た時に『あの子は予習をして偉い』と思われるように、一足早い次の次のLessonの新出ワードを入力しておいた。
時代を感じる大きなカセットテープからは、聞き取り文が早口で流れる。
普段なら眠りを助長する音さえ、今日は新鮮に感じる不思議。
昨日とは違う結衣の授業態度に、隣の席の大塚は首を傾げる。
田上結衣と言えばちっとも勉強をしなくて、
宿題を見せてくれと頼まれなかった日は土日だけぐらいのレベルだ。
進学コースは頭が良いのも当たり前だが、普通コースも一応県立で、
服飾コースのお陰でそこそこ有名な高校に入学できたのかさえ謎なくらいサボり魔だったはずなのだけれどと、異変が疑問だった。
――恋する女の子。
愛しの彼よりも雑魚キャラだと踏んでいる身近な奴が、先に変化に気付くものだ。
顔に出やすい、態度で分かる、そんな恋愛初心者は自分が思っているより以上に気をつけなくてはならない。
けれども、恋に夢中な少女は可愛すぎるくらい周りに注意が足らなくなる。
そこをフォローする為に、里緒菜と愛美がいるといっても間違いではないだろう。
とはいえ、大塚は恋愛に疎いので問題ないだろうと親友二人が踏んでいる失礼具合こそ、
その場限りの会話に執着する女子高生イズムだ。



