「あー、どうしよ……話ししたんだよ! 目見た! かっこいかった色気に殺されちゃうから。
もーっやだー、見たんだってばー、カッコイイ、狡いっ」
凄くない? 凄くない? 凄いよねぇ? わたし
だって……!
会話成立してんじゃん
凄い凄い偉い信じらんない
好きな人と話す行為は莫大な緊張と不安があって、だからこそ壮絶な喜びがある。
特別な感情のない人と話す時となんて、わざわざ会話と捉えもしない流れのため、天と地の差だ。
ドキドキする胸を両手で抑え、思いっきり里緒菜に向かって倒れ込んだ。
すると迷いなく腕を広げキャッチしてくれるのは、息が合っている証拠だ。
ああー、も、幸せ
愛美、里緒菜
カッコイイ、好き
子猫が擦り寄るように結衣は思う存分密着する。
幸せ過ぎて足に力が入らないからと、甘えまくる。
彼女は仮にも末っ子なので人に懐くことが好きだ。
幼少から愚図だったので、何かとしてもらいっ子ちゃんとして育てられた節があり、
本人は自覚がないが、取り入るのが上手だったりする。
「よしよし良い子ちゃん、世界中が結衣思考なら世界は平和なのにねーと。国会議員になりなよ」
からかいながら背を撫でてくれる里緒菜に、
「あー、話したからっ、あ〜もうやばいよ私、にやけっ面きもいでしょ」と、
極端にテンションが上がったまま更にきつく抱きしめた。
周りから見れば、さぞ気持ちが悪い光景だろうが、そこは女子高生誰もが通る道で、
おかしなテンションには温かい目が必要だ。
なんでもハタチ前後の女の子はわざとオーバーに振る舞い、変なノリを故意に演じて愉しむ嗜好があるため、
そんな内輪ならではの痛い感じが、仲良しの象徴とも言えよう。
結衣はそういう若いの一言で片付けられがちな現役放課後らしさが大好きだ。



