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なんと、偶然奇遇作戦は第二段階に突入することとなった。

他人から顔見知りになることが第一段階の目標だったため、

第二段階に入る結衣は、ターゲットに『知られている』という課題をクリアしているのだろうか。

いいや、ステップアップの基準は近藤が自分を認知している点なのだから、甘採点でもそうは言えない。


ならば何故？

どういうことか里緒菜と愛美は、片思いの友人に第二段階へのレベルアップを許可してしまっていた。


というのも、本人ではないけれど、彼の相方の市井が結衣の顔と名前を認識してくれた結果、

数日前より断然現状は良好であるためらしい。

実のところ、バレンタインを区切りにしたいと結衣が強く願ったからでもある。


今日は愛美が見張りをしてくれているので、里緒菜と二人で作戦実行だ。

世間では女子の三人組はバランスを保ちにくいのか、よく二対一で分裂したりするが、

彼女たちは時事ネタを誇張して笑ったり、深夜ＴＶのネタを皮肉って楽しむゆるい関係の延長なので、

そういう部分ではある意味いざこざや確執がなかったりする。


ちなみに、モメる時は『昨日の○○見た？ うける』『見てない寝てた』『えー面白かったのに、ばか』といった具合で、

まとめると、シリアスが苦手な人間の集合体である。


赤茶色の髪が現れた瞬間、ずっと待ち伏せしていた結衣は、まるで今気付いたとばかりに四歩駆け寄り、

「あっ！ 市井くんじゃん、大丈夫？ もう平気？」と、

ごく自然に偶然を演出し話しかけた。


ぶっつけ本番で好きな人に声をかけるより、

このように、友人から攻める方が気が楽なので、失敗が少ない。

市井をクッションに、近藤に対して間接的なアプローチする。

なんて微笑ましいアイディアなのだろうか、ついつい背中を押してあげたくなる素直さが結衣の強みかもしれない。


宿題を見せてという悲鳴とジュースを奢れという要求が、どこからか風に乗ってきた。

マドカ高校の朝は、幼い生徒たちがオーバーリアクションで作り出す。