球体の中にオイルが詰まった入浴剤のように綺麗なオレンジ色をした太陽と、
泡風呂の白いふわふわを浮かべたような雲が仲良く遊ぶ空、
冬の天井は風さえ吹かないければ、
日だまりという言葉がぴったりでハンモックに揺すられ自然を味わいたいオーラを醸し出しているのだけれど、
冷水のシャワーの如く流れる風は、寒気がお好きなようでカイロが欠かせない。
「でも結局市井。大塚より全然市井」
「あれ別格、あれ目の保養」
相変わらず男子について和気あいあいと無意味に語るのは、
十代が生きる教室だとごくごく日常的な風景だ。
なぜなら女子高生は、異性の目を気にして過ごさなければならない呪いにかけられているから、
とりあえずポップにはしゃがなくてはならないのである。
市井?
愛美の発言に食い付いた里緒菜に、結衣は今年始まってまだ数週間だが一番の感謝をした。
彼女たちの言う市井とは、隣りの服飾コースの市井雅で、
格上イケメンと他校にもなぜか名を知れた噂の人で、
どうして外見が良いと芸能人でもないのに皆が知っているのだろうか。
また、なんでもかんでもイケメンと呼ぶのは何故なのか、
誰か女子について研究すれば良いのにと結衣は思う。
なんやかんやで、そんな評判のある彼を見に行くならば、
必然的に同じクラスの近藤洋平を視界におさめることができる。
近藤くん見れるかな
ラッキーかも
跳ねるように教室のドアを開け、すかさず「見に行こー?」と、ほくそ笑んでみせた。
えくぼが二つ現れる満面の笑みに裏はない。
しかし、二人の友人は顔を見合わせ、大袈裟に肩を竦めると残念なことを口にする。
「えー服コおっかないよ、行くの戸惑う」
「ほんまそれ。勇者」
砕けた口調で笑うのみ、彼女たちは教室を出ようとはしない。
廊下側から侵入するひやりとした冷気に皮膚の熱を奪われ、少し身を縮ませた。
……。
仕方なく結衣も「ですよねー」と同調し、開けた扉を自分の手で閉めた。
女の子は協調性が大事だから――なんて嘘。彼女も本当は好きな人が居る教室に行きたくなかった。
それもそうだろう。
なぜなら――



