皆が憧れる市井よりも、乙女心を分かってくれない何かが不足している近藤がたまらなく愛しい。
始まったばかりで何も知らないのに、
どうしてこんなに特別な人になってしまったのだろうか。
、すき
両思い……
再び両腕を拘束されたのは、親友に腕を組まれたせいだ。
愛美と里緒菜の気持ちを体感し、だらしなく唇は ゆるむ。
うろたえる近藤に、「静香ちゃんに嫉妬した」と、本音を告げた時には彼を茶化す気持ちは皆無で、
本当に凹んでいた辛さが確かに彼女の声色に表れていた。
天窓から一筋の光がキラキラと注がれ、大好きな煉瓦色の髪の毛をワントーン明るく透かしている。
隙間風は日だまりを運び、今か今かと春を待ち望む。
「は?、静香ちゃ……! それ、作、戦」
いつだって近藤は乱れない性格だと思っていたため、
こんな風に大声を出すなんて予想外でしかなかった。
「――、え?」
片思いをしていた結衣には聞き慣れたフレーズ。
“偶然奇遇作戦”
恋愛対象外から顔見知りになって知り合いに、友人になって恋愛対象になって、彼女になれた。
好きな人の恋人。
近藤の隣を歩く権利を手に入れた。
近藤が好きな女の子に変身できた。
作戦を重ねると夢は叶った。
好かれるように努力をした。
計算ありきの片思いだった。
愛美が居たから、里緒菜が居たから、市井が居たから、奥が居たから、大塚が居たから、静香が居たから、姉が居たから、
皆が居たから頑張れた。
皆とは誰かと言われたら、とりあえず七人は挙げられるようになれた。
虹は七色、ラッキーセブンは七、幸せの小人は七人、癒しの七草粥の七、幸福の七福神は七人、
それさえ意味がある気がするのは、恋愛をしている乙女が幸せ解釈思考の結果だ。
片思いを終えても恋をしているなら、女の子はいつだって変わらない。
ほら、アルバイト先の二人を忘れている結衣らしさも相変わらずある。
何も取り柄がない彼女は、作戦を通して学生の恋を手にすることができた。
自分は中途半端な人間だと悩んでいたけれど、よく考えたら結衣を大好きな変人の友人が二人も居た。
それは多分、結構素晴らしい魅力だ。



