揺らぐ幻影


友人の助けでなんとか立ち上がった結衣は、

失礼ながら彼女たちの登場により、近藤の告白を受け入れようやく落ち着きかけていた頭を再び混乱させてしまった。


  愛美、里緒菜

  なんで

  え、ほんと……なに、


近年アヒル口が流行りらしく、仕上げにニスを塗ったようなグロスで輝かせた唇を女子はこぞって尖らせ、

アンニュイな口元を演出する。

だらしがないから唇は閉じるものだと小学生の時に習った。


しかし、高校生の結衣はぽかんと口を広げたまま十八秒、瞬きも忘れていた。


「愛美、里緒、菜も、何、あは、サプライズ? え、」

二人が現れた意味はやはり分からなくて、困惑した結衣は近藤の存在さえ忘れてしまう。


たいやきを食べながら歩く女子グループ、男性にバックを預けたカップル、

たくさんの人が居る中、たまたま街中で知人にばったり会ったら嬉しくて、

立ち話に盛り上がり、遊ぶ約束をした時よりもテンションが上がるが、

今は例外だ。


キャメルのライダースに花柄ワンピースを合わせている愛美は、

決まりが悪そうに毛先を弄りつつ言った。

「やー偶然駅で里緒菜と出会ってー?」


カーキのモッズコートにロンT、ニーハイブーツにショーパンが似合う里緒菜は、

気まずそうに左手の中指に嵌めた指輪を回しながら言った。

「そー。告白現場に居合わせるとか奇遇すぎ」


両サイド二人の説明を、結衣はひどく学生らしいと感じた。

わざとらしい話し方はとんだ寸劇、お遊戯めいている。

まるでお茶の間は置き去りの身内ノリを繰り広げるツマラナイ茶番、

他者にとって爆笑ポイントがないため、いまいちな温度差を覚える内輪ネタ、

つまり近藤からすれば、三人の会話に若干ついていけず戸惑っているのだろう。


これぞ女子高生。
仲良し組だけがテンションで笑える雑談や幸せしかない懇話はきっと友情の証拠、

見落としてはいけない絆ってやつだ。


そして、三人娘最強伝説がここに――

愛美と里緒菜は普段オシャレなのに、今日は微妙なコーディネートで季節感がなくダサイ。

そう、それは主役の結衣を引き立てようと、近藤に親友を売り込もうとした愛情の結果だと暗に示している訳だ。