揺らぐ幻影


好きな人を笑顔にしたかったけれど、

せっかくのホワイトデーなのに女子高生的な純愛要素に欠けすぎて、

なんだか全体的に意味が分からなくなり、結衣は自分で自分に笑い出していた。


二人向き合う。
近藤は遠慮気味に含み笑いを、結衣は薄ら笑いを続けた。


告白返しをされたと解釈していいのだろうか。

自分の恋心をあげた代わりに彼の分を預けられたと、

交換をしたと捉えていいのだろうか。


ふわりと運ばれるシャボン玉のような香り、それは七色に煌めく虹、

なかなかロマンチックなアイテムが揃っているではないか。

ここは現実、虹の橋を手を繋いで仲良く二人歩けないし、お月様のブランコで二人仲良く遊べやしない。


アハハというぎこちない擬音をあげながら、だんだんと今ここに居る意味を理解し始める。


  、私……

  ――両思い、?

  、……私を好き、なんだ?

  、嘘

  ぽこりん、


「冗談、」

手からウサギのお財布が飛び出した。

両思いの事実にびっくりし過ぎて、なぜか腰が抜けて、

結衣は地面にしゃがみこんでしまった。

そこはついさっきまで己が立っていた場所だ。

タイツ越しの太股に冷たさを感じる。


バスターミナルに向かう人が、座り込むなんてどうしたのかと彼女に好奇の目を向けてきて、

その様子を彼は爆笑してくれる。


ああ、また好きになる理由が増えた。

手を差し延べるより先に、笑顔を届けてくれるから大好きだ。


近藤の手にあるマシュマロへと手を伸ばそうとした時――


「結衣おめでとー!」
「おめでとうっ!! やったじゃん!」


衝撃を喰らった。


「? うわ? ――っ! り! まなみ?!」

力強く抱きしめられ、結衣は身動きが取れない。

近藤も目が飛び出るくらい見開き、愛美と里緒菜の登場に驚いている。

そして、女子高生三人を膝間付ける男子は何者かと、すれ違う人々が不思議そうに見ている。


ホワイトデー、三月十四日、休日、呼び出し、両思い。


「な、  に、? っちょ、……愛美とか、 なん、――、 恥ずかしって」

文化祭のフィナーレや体育祭で勝ったばりの青春感がこそばゆい。