揺らぐ幻影


上手にこの想いを終わらせられるだろうか。

近藤洋平を綺麗に忘れられるだろうか。

新しい恋ができるだろうか。


手を繋がない。
唇に触れない。
肌を重ねない。

そんな初恋だから、きっと大人になれた頃には美化され懐かしめるようになるかもしれない。


恋人になったら夢があった。


修学旅行はクラスが別だからこそ、すれ違い様にアイコンタクトをとりたかった。

卒業式はカメラマンにお願いしまくってアルバムに載せてほしかった。

成人式は写真館で格式張って一緒に撮りたかった。

短大? 専門? 四大? 就職?
新生活はデートを重ねて笑いたかった。


人生の節目には、田上結衣が近藤洋平の隣に居たかった。



女の子は特別な男の子と結婚したかった。




馬鹿だと思う。

付き合う前の段階でウェディングドレスを夢見るなど、小学生でも子供だとびっくりするかもしれない。


けれど、好きで。
そう、この気持ちを表現するなら結婚という単語しか浮かばない。

結衣は馬鹿な女なのに、近藤を誘いカラダを売り込む馬鹿な真似はできなくて、

矛盾というか筋が通っていないというか、この恋心は失笑だ。



  好き……

好きにさせたのは近藤なのに。


マシュマロは白い。

そういえば小学生の時にクラスメートの男子に、

幼稚最強、『雪女はマシュマローきしょい』とからかわれた。

また、そいつのせいで他の男子も便乗してきたので、結衣としては非常に不服だった。

あの子は転校する日に――


ああ、やっぱり結衣は昔から馬鹿だった。

あの少年はお別れ会の最後に、例外なく雪女だと意地悪をした。

当時幼かったせいで腹が立ち怒りすぎて逆に泣いてしまった結衣に『結婚しよう雪女』と、

抱きしめられて、好きだと言われた。


ああ、すっかり忘れていた。

あの少年が大嫌いだった結衣は余計泣き叫んだったのではないか。


子供臭い奴が居た。

好きな気持ちを上手く伝えられない幼さは、結婚に繋がるのかもしれない。

忘れるのは罪? 人の記憶から削除されるのはなんだか笑えない。

きっと告白は二人が同じ方向を見ていなければ意味がない。