失恋するなら――
白ではない結衣は浅ましいことを考えなかったとは言い切れない。
振られたら場合、『はい分かりました』なんて頷けず、聞き分けよく諦められない。
だって好きなのだから。
こんなにも好きなのだから。
簡単に好きな人を忘れられない。
そう、思い出にキスを一つくらいお願いしたい。
ううん、記念に抱いてほしかった。
馬鹿な女だと引かれようが本音だ。
だって好きなのだから。
もう付き合うとか付き合わないとか、彼女とか彼女じゃないとか、
そんな形式ばった区切りなんていいから、このまま安いホテルにでもさらってくれたらいい。
愛の言葉なんていらない、一時をくれたなら、そうして先に帰ってくれたらいい。
学校で会っても無視してくれたらいい、ううん故意に仲の良いふりをしてくれてもいい。
どのみち、結衣の気持ちを知った上で近藤が彼女と関係を持ったなら、
『なんて最低な男なんだ!』と被害者面して彼を嫌えるはずだ。
恋を終わらせられるはずだ。
――けれど近藤洋平。
彼のことなど一割も知らない結衣だが、悲しいことに『そういう人なんかじゃない』ということは分かっている。
浅い日々の中で、そういう人じゃないと。
だから近藤洋平。
抱いてくれなど一方的な発言をする女を心底嫌いなのだと予想がつく。
好きな人に嫌われたくはない結衣は言えない。
オンナってだけになれない。
だって恋人に対する感情とは違えど、好かれていたいのだ。
近藤が高校時代を振り返るいつかの未来に、嫌な女というイメージで君臨するんじゃなく、
初々しい恋をしていた女の子が居たと大切な記憶になっていたい。
腐っても女子高生、好きな人の前ではぶりっ子しなければならない呪いにかけられているのだ。
言える訳がない、ファッション雑誌の煽り文句の如く愛されガールである宿命、
男子が望むテヘッを演じる義務がある。
だから結衣、利己的な願いを口にして幻滅されたくないのが無垢な女子なのだ。
好きだった。
どうしようもなく。
仕方ないでしょう、初恋。



