目に入るのは、大好きな ふわふわ揺れる髪。
隙間風に踊るのは、シャボン玉を思わせる石鹸、ミントではない彼の香り。
あの時と違うのは、大好きな人の爽やかな香水。
くるりと近藤が身体の向きを変えたので、いよいよ判決を下されることになる。
緊張で震える膝にカツを入れて、好きな人を結衣は真っ直ぐに見つめた。
「バレンタインありがと。お返し、マシュマロ。はい」
ふわりと笑う彼が差し出すのは、マシュマロだ。
ここ最近人気が定着したクマのキャラクターが包装に描かれたマシュマロ。
「……へ? ……? 、マシュ」
苺ジャムをつけたように煌めく少女の唇からは、頼りない声が出た。
フルーツタルトを作った際、食べる前からピカピカ光って凄く美味しそうで可愛さが増すよう最後に果物の表面にナパージュを刷毛で塗る。
女の子のお化粧は、きっと製菓学校に通えばたくさん技を盗める気がする。
繊細でセンスが問われ、また技術が必要なお菓子作り、
恐らく綺麗になれる手ほどきの鍵があるはずだ。
うそ、
マシュマロ最悪、義理
甘ったるい唇は音を生まず、苦い気持ちを閉じ込めた。
ホワイトデーのマシュマロは、ごめんなさいの義理だと聞いたことがある。
確か本命はキャンディだったはずだ。
まさかこんな仕打ちで返事をもらうなんて夢にも見なかった。
背中の下ら辺、腰周りの骨がおかしくてバランス感覚を失って倒れてしまいそうだ。
ぺたんこの靴だから辛うじて立っていられるようなもの。
マシュマロなんだ
失恋を受け取るのが嫌で、手を伸ばせない。
このクマ、愛美が好きなんだっけ
関係ないことに考えを巡らせ、現実逃避を試みるがそうはいかない。
「……。」
パッケージからして小学生の娘に、父親があげるようなイメージで、
結衣は彼にちっとも女扱いされていないのだと物語っている。
無意識に手にしたのはポッケの中で眠っていたウサギのお財布。
緊張に握られたり、悲しみに押さえられたり、嫉妬に掴まれたり、
片思いに疲れたウサギは汚れているし、くたびれている。
マシュマロ、



