「、はよ」
バレンタインデーとホワイトデーの相違点ラスト、
――待ち合わせ時間より早いのに、近藤洋平が先に居たこと。
ふんわりとした煉瓦色の髪の毛から覗く瞳に、きっちりと結衣が居る。
それは彼女が映ろうとしているのではなく、彼が意識して視線を注いでいるせいだ。
少し見上げる顔はいつもと一緒、けれど悪戯っ子のようで普段よりも魅力的に感じる。
昨日まで彼は意地悪だと思い込んで嫌おうとしたのに、
結局諦められなかったどころか、こうして会えば今日また好きになって、
明日に甘く期待をしてしまう。
やっぱ、すき
好き
にやけてしまった結衣と同時に、近藤の眉毛は難しそうに一度つり上がった。
ぺたんこの靴で立っていると、足裏でしっかり地面を踏んでいるのだと実感する。
浮かれモードは、お花畑の国に住む乙女の得意技だが、
ここは現実、魔法もないし おまじないもないし、天使も見えない。
この世界では、自分の努力と友人の繋がりが片思いの力を宿すのだろう。
なんかなんも考えらんない、
だめ、
振られるとか告白されるとか、二択が頭の中から すっ飛んだ。
とにかく彼の雰囲気にのまれてしまう。
ただ この人が自分の好きな人なんだと思うだけで精一杯、
胸から心臓が飛び出してしまいそう。
白色のシャツの上にお尻を隠すまで長さがあるざっくり編みのベージュ色カーディガンを羽織り、
踝が覗く微妙な計算で折られた黒色のチノパンと爽やか眩しい白い靴、
さし色になっている斜めかけの水色のバッグ、全体は誠実少年っぽい。
オシャレ
……かっこい
女子高生だろうか、ちらちらと年頃の女の子たちが彼に注目しており、
それは結衣が愛美らとイケメン採点をする時の目つきにそっくりだ。
凄く似合っていて、ドキドキが止まらない。
こちらが惚れさせる予定が、まんまと逆に惚れさせられてしまう。
どうして好きな人には、ホログラムやスワロフスキー、
ラメをばらまいたかのようなキラキラ光る魔法の粉が見えるのだろう。
片思いにCG加工なんて必要なくて、恋する瞳は 愛しの彼をまばゆく煌めかせる。



