揺らぐ幻影


舞踏会への衣装は夢のようだった。


スプリングジャケットかコートかちょっとよく分からないが、ノーカラーで薄いデニム地のロング丈アウターは清潔感があるし、

毎年この時期に流行るクリーム色の花柄総レースのすとんとしたワンピースは優雅だし、

ビジューがたくさんあしらわれた春らしいピンク色のぺたんこパンプスは、背が気にならないローヒールなのが嬉しいし、

靴とお揃いの色と素材をしたキルティング地の円柱のバックは女の子らしく、

トータルでお上品な印象だ。


  かわいー

  可愛い、凄い可愛い

近藤だって見惚れてくれるかもしれない。


デートで白いワンピースを着るのは憧れだけれど、

白は人目をひきかなり注目を浴びるため、いざ街中で身につけるのは少し恥ずかしいところを、

落ち着いたクリーム色で、更にジャケットで面積が隠れるので安心だ。

なぜ彼女は結衣の好みや気持ちを把握しているのだろうか。

正に夢に見たデートらしい理想的な格好だった。


  頑張れる!

年が離れているせいか、いつもからかわれるので意地悪な姉には、

絶対、初恋も馬鹿にされると疑わなかった。


けれども、一番優しい方法で協力してくれて驚いてしまう。

お化粧や髪が似合わないと教えてくれたり、こんな風に手伝ってくれたり、

ほかほかと身体の中に温かい血が巡る。


大人な姉、数年経てば結衣も彼女のようになれるだろうか。

里緒菜や愛美のように、気配りができる大人の女性になれるだろうか。

市井のように、誰にでも優しく振る舞える人になれるだろうか。

大塚のように、寛大な心が持てる人になれるのだろうか。


なりたい自分があるなら、今しなければいけないことは何か。

答えはいつも一緒だ。



「お姉ちゃんありがと、ぽこりんに惚れてもらうから!」


快晴な空に向かって強く宣戦布告した。

何事もビッグマウスでナンボだ。
決意を誰かに伝えることで、自分の目標を共有できる。

応援してくれるから、頑張れる。

子供な結衣はまだまだ手厚い援助がないと、力が出なくて頑張れない。

人との繋がりが意志を強くする。


ホワイトデーに頑張るのは結衣しかいない。