揺らぐ幻影

―――――――
――――

レースカーテンに浮かぶ人影はおっきくなったり小さくなったり、

ソファーに座ったり立ったり、落ち着きのない結衣は時計の短針が三十度動くくらいから、

ずっと時間の観察ばかりしていた。


まだ十時を回ったばかりだが、お化粧も髪も服も完璧で、

いつでも待ち合わせ場所に向かうことができる。


少し前の自分を思い出すと、複雑な気持ちになった。

教室にある流言蜚語、お化粧は濃いとケバいとか下品だとかで一部の人からは不人気だ。

しかし女子の中では、オシャレとして染み付いていて、

可愛くなる手段にメイク道具は必要不可欠。


一度お化粧をした自分を知ると、素顔に戻れなくなる。

塗り重ねれば重ねる程、どんどん目が大きくなるし、肌も綺麗になるし、

雰囲気が華やかになって別のキャラクターになれる。

だから女子の過半数はお化粧が大好きだ。


しかし、知識が増えて技術が上がると、いつの日かを境にスッピンを嫌いになってしまい、

益々濃くなる悩みを抱えた子も、世の中には居る。


本当に自分に合ったメイク、それは魔法、

心の中から綺麗になれる魔法に出会えることが重要なのだろう。


そう、心にまではさすがにファンデーションを叩けない。

振られるとしても、今更性格のアピールなんて出来ない。


だから、せめて私服姿で 見直してほしい。

恋する結衣は、よく似合うと言われる小花柄のワンピースを着ている。

出かけにベージュの春っぽいモッズコートと、キャラメル色のウエスタンブーツを合わせるつもりだ。

もちろん奥直伝の魔法のメイクと、程よくカールしたヘアを心掛けてモテ子になりきる。



  泣きませんように


今朝は愛美と里緒菜から頑張れと簡単な内容のメールが届いており、

ありがとうとあっさりした文章で返信していた。

あんまり意識すると緊張で平常心が保てないため、後は一人で頑張ることにしていた。


散々お世話になったなら、最後はきちんと巣立ちたい。

ポエムを綴れば、結衣はちゃんと自分の翼で空を飛べるようになりたい訳だ。


流れる飛行機雲と対角線状に羽ばたく小鳥、新しい一歩に光る太陽、

今日はきっと良い天気。