だとすれば、以前のように未来を夢見て頑張るべきなのだろうか。
けれど、結衣が生きるのは今。
過去でも未来でもなく、今。
今、何をしなければいけないのか。
今、何をするべきなのか。
女子高生になったら勉強なんかより友人と遊びたかったし、アルバイトがしたかった、
そして一番恋愛がしたかった。
そんな結衣はぼんやりとだが、中学の英語で習ったhave to文、must文が頭に浮かび、
それには何か意味がある気がした。
そう、片思い組の強みは、なんにでも重大な理由があると勘違いすることだ。
ふわふわとしたバレンタインのお花が部屋中を甘く香らせる自然現象にも、
とてつもない予感が隠されているに違いない。
「明日一時だって〜!」
オンスピーカーにして子機と携帯電話を隣に並べると、三人同時に会話が可能、
騒ぐ様子はアイドルの運動会のよう、カメラを意識してオーバーにはしゃぐ甲高い声にそっくりだ。
『やったじゃん』
『良かった』
「いやいや振られるかもよ」
『振るならメールで振るし』
『休日に呼び出さない』
「、そーかなー?」
結衣は近藤のメール内容を音読し、大親友の二人に相談していた。
『大丈夫、気がないなら見たくないし』
『そーそー勘違いされたら困るから会わない。大丈夫大丈夫』
「大丈夫、かなー?」
大丈夫、それは信頼している関係の時は何よりも大切な言葉、
適当なようで、根拠がある言葉、
『万が一大丈夫でなくとも、自分たちが居るから大丈夫』だという優しさだ。
「頑張る!」
嫌いな女ならば休日に会いたくないだろう。
勘違いされたくないならメールで振るだろう。
本当に嫌いならシカトするだろう。
だからきっと大丈夫、そうやって大丈夫だと洗脳させる。
律儀な人だから面と向かって断るつもりなのではという残念な展開はゼロだと言い聞かせる。
自分を頑張らせたいなら、不吉な予想は消し去ろう。
明日で全部
ホワイトデー
片思いに夢見る乙女は、期待と不安。
Yのイニシャル、ウサギのお財布、プリクラの待受画像、チョコレートのお花、
これだけあるなら、頑張れば頑張れる。



