揺らぐ幻影


平日の八時半、あいにく店内には女子大生二人組と男女グループ、

PCを開いたサラリーマン一人と彼らしかおらず、人手が足りなくなることはなさそうだ。


学生が集団になると、なぜ店員相手に図々しくなるのだろう。

「学校楽し?」
「マドカ可愛い子多いよね」
「安心して田上さんも含まれてっから」

この手のお喋りは、ブログで親友宣言しない結衣にとって非常につまらない。

笑うポイントがないからだ。

彼女が望む言葉のやりとりにはオチが必須、爆笑あっての談話が好ましい。


ここに近藤が居たなら、『この職場選んだの制服カワイイからだろ? お姉さん自意識過剰』とか、

『ボールペンなんでキャラもんカワイイのしてんの、イジられ待ちか』とか、

愉快に笑わせてくれるだろうに、

正反対なちやほやする会話は白々しくて面白くない。


「よし田上さん! 仕事終わったら遊ぼっか?」


  ほら、きた。

学生にありがちなテンションを笑顔で交わすが、内心舌打ち真っ最中の結衣は、

いちいち面倒臭くてユニークさに欠ける異性に時間を割く場合のメリットが見出だせないでいる。


軽いノリの人は自信家なのだろうか。

それともこんな風に真剣味ゼロにチャラチャラしていたら、

いざガチで断られた際、『冗談が通じない奴だ、うざい』と予防策を張れるからだろうか。


どちらにせよ、言葉のキャッチボールが楽しくない奴は苦手な結衣だ。


ドリンクバーに立つサラリーマン、求人情報誌を手に討論するグループ、

早く厨房に戻って大学生たちと遊びたい店員、ここはファミリーレストラン。


  あーあ、

  私って本当に雑魚キャラなんだな

こういう風に絡まれることは、声をかけやすい外見レベルだからだ。

近藤につり合う女の子は、きっと軽々しく接しられることはないイメージなので、

どうでもいい連中に囃されるなど、彼ら以下の女と見做されているため、

好きな人の隣が似合わない。


可愛くなりたくて、美人になりたくて、どうして静香が頭に浮かぶのだろうか。

もしもこの場に彼女が居たなら、あっけらかんと打ち解け仲良く盛り上がっているのだろう。

ヘラヘラするだけの性格がもどかしかった。