揺らぐ幻影




嫉妬をバネに奮励する女の子はまだ応援してやってもいいが、ひがむだけのタイプならば気の毒だと引く。

やきもちはブレーキランプが切れた車を運転するくらい危険で、

他人に迷惑をかける行動なのだといい加減気づこう。


教室で泣いた痛い事件なんて、放課後チャイムが鳴って学校を出た瞬間に忘れよう。


ファミリーレストランは集団が誘う場所だ。

ピンポンに反応し、呼び出し番号を確認してテーブルへと急ぐ。


「ご注文はお決まりでしょうかー?」

厭味なく微笑むウエストレスは、席に座っている学ラン姿のお客さん三人にそれぞれ一秒ずつ目を配った。


既に食べ終わっているお皿と、メニュー表を広げていない机を見れば、店員はなんとなく次の展開が分かっていたが、

仕事の制服を身につければ、立ち振る舞いが変わると自覚している。


「な、可愛くね?」

一人が得意げに口にすると頷く二人、

ネームプレートをなぞった直後、「田上さんマドカっすよね」と聞かれ、

「あは、エスパーなんですー?」と、結衣は曖昧な返事をした。


地元でのアルバイトは生活範囲内だからか、すぐに身元がバレる高校生の情報網、

知らない人にも卒業アルバムを通して噂がてら知られている不思議。


「服コん市井って俺んツレよ」
「分かる? 雅、イッチー」

また、学年で有名な生徒と知り合いだと主張するのがお約束だ。

それが人気者と親しい自分アピールの低俗な自慢に思えてならない結衣は、

注文じゃないのかよとツッコミつつ、心の中で深いため息をついた。

男子高生は三人以上集まると馴れ馴れしい、これは女子高生をする内で発見したことだ。


「市井くんカッコイイですよねーあはは、ご注文は?」

落ち込んでいる時に、彼らのテンションはきつい。

知り合いの知り合いは友人?
全く知らないお客様方は、どうやら高校生らしいお喋りがしたいようだ。


「彼氏居る?」
「可愛からモテるでしょ」

「えー、褒めても会計割引できないですよー?」

アルバイト先も高校名も苗字も把握されたなら下手にあしらえないのが、今度は女子高生の鉄則だ。

煩わしく思う結衣は勤務時間のみ二つに括っている髪の毛をくるくると弄った。