揺らぐ幻影


もやもやイライラむかむかジメジメねちねちズキズキ、

里緒菜だったら結衣のように嫉妬をしていないのかもしれない。


一つ、行動する前に情報や経験からある程度先を見据えた上で実行すると、大人らしい意味がある。

一つ、噂や知識から未来を推測することで躊躇してしまい、現状維持を続けるなら無意味。

一つ、あれこれ考える前に思ったままチャレンジする子供を真似ると、時に偉大な意味を持つ。


勝算のある一つ目とリスクを伴う恐れもある三つ目、どちらがいいのかは結果次第だ。

ちなみに結果とは功績も大事だが、この場合は中身の成長率を指す。


さあ、悲しいかな、今の結衣は二つ目だ。
プライドが高い彼女は足踏みをしているつもりが、徐々に後退してしまっている。


仮想はくだらないけれど、有力な場合もある。
そう、里緒菜が結衣ならば、とっくに打開策を練り進んでいるはずだ。


結衣が結衣だから醜いだけで、静香は何もしていない。

ただのクラスメートなだけ。
ちょっと話す女子なだけ。

この片思い物語は、ひたすらネガティブ展開なので、いい加減腹を立てて本を閉じるだろう。

勇気を出さずに下ばかり向き、自分を卑下する自己顕示欲に満ちた悲劇のヒロインに呆れ返っているに違いない。


滲む視界に結衣は文字が読めなくなる。

もうすぐテストが終わる。
タイムリミットはホワイトデーだ。



「せんせ、田上さん泣いてんけど!」

名もなき少年の発言に、「なんだ田上ー難しいのか? 後二分あるから落ち着け」と、テスト監督の先生が放ち、

たちまちE組全員が出席番号十一の女子生徒をシリアスに注目するも、

「気づいた奴カンニングじゃね?」、「ほんまそれ、よそ見とかコッス」、「違反すんな自力で解きな」と、

心配の声より砕ける空気に染まる。


それは、構ってちゃんになりたくない結衣は心配されるのが嫌だからこそ、

腫れ物扱いされない存在をE組に築けるよう日ごろ励んできた背景であり、

泣いているのが結衣というキャラクターだったせいだ。




「こら私語禁止ー。皆前向く」

泣く意味はない。
泣いたら負けだ。


「だぁって。難しいんだもん!」

とりあえず結衣は笑えばいい。