揺らぐ幻影

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校舎を叩く風は相変わらずで、運動部が気の毒なくらいだ。

気温は上がってきたものの外を歩けば鳥肌が立ち、屋内との差に風邪を引きそうだ。


学年末テストは進級に左右するため皆頑張るもの、三年生には無関係なイベントだ。


中学生の頃から結衣は積極的に勉強をしないタイプで、

した方がいいと分かっているのに、点数が悪くても先生と仲良くしていれば成績表はそこそこだったから、

調子に乗って甘えていたのかもしれない。


高校生になっても変わらなかった。

開始前の十分休みに頭が良いクラスメートの元へ向かい、

だいたい出るポイントを暗記するだけでなんとかなっていた。


そして結衣を担当するのいつも大塚で、きっかけは里緒菜だったはずだ。


『大塚にヤマ教えてもらいなよ』

出席番号で小崎里緒菜の左隣りの彼が秀才だと判明し、結衣が依頼するようになり、

今思うと、里緒菜は好きな人と話すネタとして結衣を利用していたのかもしれない。

悪い意味ではなく、結衣をダシに近づきたかったのかもしれない。

冬休みなんて朧げ、随分と前から彼女は彼を好きだったのかもしれない。


もっと早く言ってくれたなら、昔から協力していたのに。


きっと大塚は普段人に頼られないせいで、テストの度に縋られることが嬉しかったのかもしれない。

大人目線で教室を見渡せば、いくらでもヒントはあったのかもしれない。


後五分で終了する。シャープペンシルは謎な文字を連ねる。

往生際が悪い結衣は焦って芯を折るばかりだ。


  、なんか

  ……。

もっと早く気付けていれば、何か変わっていたのかもしれない。


しれない、しれない、終わったことを予測して何になる。

仮説はあくまで自分の意思で立てられるものなので、

どんなに客観的に分析しようが既に固定概念がこびりついており、

結局、己の思考力による範囲内でしか答えを見つけられないのだ。


  静香、ちゃん

もしも里緒菜が結衣ならば、彼女はどうしているのだろうか。

テスト中に気になるのは好きな人のこと。

近藤とちっとも進展しない今、静香という存在を送り込むなんて脚本家を信じられない。