私……
……やだよ、こんなの
彼は忘れてしまったのだろうか。
たくさん話してたくさんメールをして、たくさん笑ってくれたりたくさん手を振ってくれたり、
飴ちゃんを拾ってくれたのは近藤だったのに、
好きな子と接するよう優しくしてくれたのは誰?
甘い笑顔を残してくれたはずが、あれは幻だったのだろうか。
バレンタインの一件以来、すっかり自信が付いて――最近は彼氏彼女のような距離感で――
やはり忘れてしまったのだろうか。
結衣を見てくれていたのは、近藤の意志だったのにあんまりじゃないか。
散々心を許したように振る舞っておきながら、最近冷たい。
前みたいに結衣と面白いお喋りをせず、静香とばかり居る。
まるで、今まで結衣にしてくれていたことを静香にしているようだ。
「、っ…………やだ、」
分かっていない。近藤洋平は何も分かっていない。
独り言を呟かせ、号泣している痛い女に成り下がった結衣の恋心を分かっていない。
「、……」
涙が止まらない、悲しい、切ない、だって苦しい。
好きな人がちっともこっちを見てくれない。
片思いがこんなに辛いなんて知らなかった。
新しいノートでたまに指を少し切ってしまうのだけれど、そっちの方がマシだ。
気管が詰まって喉の奥が困る。
プールで溺れた時の方がまだマシだった。
アタシを見て、アタシを好きになって、女の子らしい言葉をぶつける勇気がない。
ストレートに感情をさらけ出せる女子高生が羨ましい。
いつだって怖かった、本当の気持ちを伝えて拒絶されたら立ち直れない。
はぐらかしたままなら、傷付かなくて済む。
「も、……きらい」
負け惜しみでしかない台詞は、薄い闇に溶けて消える。
明かりのない自室、勘を頼りに歩いたにしろベッドやらチェストやらにぶつかるのだろう。
暗闇から早く引っ張ってほしい。
早く助けてほしい。
でも、きっと彼は来てくれない。
こんな未来誰が望んだ?
夢は絶対キラキラしてなくちゃ子供にトラウマを与えかねないところを、どうしてジメジメしているのだろう。
愚かな結衣はお星様を買い占めて、無理矢理にでも願いを叶えたい。
…‥



