揺らぐ幻影


もう逆ギレガールで良かった。
どっちにしろ妄想癖のクレイジーガールなのだ。

白黒はっきりさせたかった。


受信メールは好きな人。



《赤点余裕? 現国は自信ある。数学は関係ない、授業態度でいける》


だから好きな人の気持ちなんて分からない。

頑張って伝えた結衣の本音なんててんで無視した内容は、

もはやわざととしか思えない。


そう、実は彼、めちゃくちゃ性格が悪いのかもしれない。

近藤はいたいけな乙女心を弄び楽しんでいるのかもしれない。

結衣のことが嫌いだからこそ今まで散々甘く泳がせ、

ホワイトデーが近づいたタイミングでこんな風に意地悪をして笑っているのかもしれない。

勘違い屋で自惚れ屋の馬鹿で痛い重たい女だと嫌悪していて、おちょくっているのかもしれない。


もしかしなくとも、結衣は近藤に全く好かれていないのかもしれない。


片思いをされて迷惑だったのだろうか。

バレンタインに告白されて、益々嫌いになったのだろうか。


高鳴る気持ちを踏みにじるのは、何も掴めない遠い人だ。


これは被害妄想ではなく、真実だと結論づけた。



好きになってもらえない。
彼女になれない。

そんな未来なんかほしくなかった。



《テスト大丈夫だよ。残り頑張ろ。近藤くんなら大丈夫だよ。おやすみ》

適当に返事を打った。

大丈夫なんて根拠がない言葉。あやふやでおざなりな言葉。楽な言葉。


ため息ばかりが充満する部屋に寝息が聞こえるには、およそ三時間、

郵便屋さんが活発に働く頃だ。


太陽を追い出し、空を占領して黒く塗るなんて、月は目立ちたがり屋なのだろうか。

存在価値を見出だしたくて周りの色を奪い、自分が一番光ろうとするのだろうか。

いいや、遥か昔に習った授業で、月は自ら発光しなかったはずだ。


しんとした空気、夜空に見下ろされる色合いの頃、

建物や木々が威圧感に満ちて縦に長く思えるのは何故。


夢見る乙女の国のお花は枯れてしまっていたので、ピクニックなんて出来なかった。

全てを印象的付けるふわふわの甘い花、

そこに近藤は居ないまま?