「結衣ちゃん謙虚だねー良い子」
「そんな所がまた良いね! お嫁さんにしたいのは田上結衣」
それはそれは計画どおりに賞賛されている田上結衣という人物で、
でたらめにしろ恥ずかしくて、結衣はホッペを真っ赤に染めてしまう。
耳元で繰り広げられる愛美と里緒菜のインチキ小話が笑える。
二人の口調はいつもと全然違って違和感がある三流演技力こそ、ワンコイン程度の友情ごっこだ。
「男子は結衣が可愛スギるからビビってんのかな」
「結衣は外見なんか気にしないもんねー」
普通に考えてみよう。
こんな発言を女友達にされたら、上っ面すぎて苛々しないだろうか。
お世辞、ヨイショ。
腹黒ガールのフォローに思えるため、結衣はこの手の同性を信用しない。
作戦だからありなだけで、平常こんな会話を繰り広げられようもんなら、まずオトモダチになっていない。
つまらなさすぎる。
そう、愛美、里緒菜、結衣たちは馬鹿臭いが、クラスの女子の中だと世間を見る目だけはあるようだ。
、近藤くん聞こえてる……かな
聞こえてる?
どうか彼に届いていたらいい。
タガミユイという音を、少し前に立った耳で認識してくれたらいい。
地道に願えば、いつか叶うだろうか。
自分を見た時に“タガミユイ”だと、頭のどこかで認識してくれるだろうか。
後ろに居るタガミユイ、……
タガミユイは
あなたを好き。
んー、ナシ?
なんかイカれた人みたい、私
ちょっと気持ち悪いからナシ
痛いくらいがちょうどいい、恋する乙女は冷静ではないのだからと言い訳をし、
結衣は己の唇をひきしめた。
眩しい癖に威力がない太陽と、されるがままに流される雲は冬らしい光景だ。
外に出た瞬間、向かい風のせいで――この場合お陰でかもしれないが、
前を歩く近藤の香りが思いっきり鼻をかすめ、
眠気覚ましのガムのようなツンと癖のある透明の空気に身体を包まれた。
何の香水?
香水……じゃない、髪?かな、
多分ミントだ、
やっぱほら爽やか



