なんで胸が苦しいのか訳を整理しなくても、
大好きな近藤がクラスメートの女子とお喋りに花を咲かせていた場面を見てからだ。
それしか原因はない。
何も知らない人が見たら、二人は恋人に見えるような和やかさを漂わせている。
「静香ちゃんとか珍し。百景に登録?」
結衣の視線に気付いた里緒菜はいつものウケ狙いな口調ながらも、
見学中の二人の組み合わせが不思議だとばかりに首を傾げた。
それもそのはずも、近藤は男子というかたいてい市井としかつるむイメージがなく、
実際、隣のクラスレベルでしか分からないが、
その範囲で得る限り、彼は必要最低限にしか異性と親しげにしている様子はなかった。
「静香ちゃんってあれ、アトリエの」
「……うん、賢い、子」
何故か理解できないけれど、お似合いツーショットを直視したくなくて、
もやもやした気持ちに気付かないフリをし、結衣は試合に専念した。
とはいえ、白いボールなら気合いの入った元バレー部員が全てカバーしてくれるため、
彼女は突っ立っているだけで良かったのだが。
……。
気が散る。目の端にあるオレンジ色とワイン色が不愉快なばかりだ。
ネットで作ったあっちとこっち。
壁を乗り越える会話のやりとりは、ボールが描く孤のように彼の言葉が自分以外に投げられている。
ルールを無視してボールを奪ってしまったなら、それは反則?
なぜムカムカするのだろうか。
ここからでは判断しかねるが恐らく近藤は雑誌を手にしており、
静香と紙面を指差し時折笑っている。
何を見て、何を笑い、何を話しているのか――
恋愛は関係なく異性でなくとも、一人の人間の全てを自分の支配下に置くなんて不可能でしかないのに、
あの人が今何を考え何を思っているか、心の中を盗み見してしまいたくて堪らない。
我慢できない、なんだか気分が悪い。
照明の光りが白い球の存在を奪う。
床を照らす明かりを、いっそのこと消してしまいたかった。
サーブもアタックも、全部全部傍観するだけで良かった。四試合は全て勝った。
残念なことにチャイムが鳴るまで、少女の唇は引き攣っていて、
初恋が踊れない世界は淡々と進む。



