揺らぐ幻影




煌めく夜空の粒は星型ではなくハート型だと、世の中の皆に教えてあげたい。

恋する乙女は自ら発光するため、デコルテにグリッターパウダーを叩く必要はない。


ホワイトデーまで二週間足らず、十四日に好きか嫌いか付き合うか付き合わないか、

返事を貰える。
もうすぐ、学生が言うところの運命の決断がくだされる。


高校生で初めて恋をした。
近藤洋平、特別な人。

寝癖っぽいゆるい髪もとろける低く響く声も、かっこいいと思える謎。

正直な話、髪の毛、特に前髪が長い男子は自我が強そうで受け入れ難かったし、耳と唇は好ましかったけれど、

聞き取り辛いから低い音、中学で声変わりをした男子は苦手だった。


だが好きな人だと、いつの間にか得意でない部分にドキドキと胸を高鳴らせるようになっていた。

説明不可能な大好きの仕組みは難しい。


  幸せ

  幸せ幸せ、幸せ

晩ご飯を食べている結衣は相変わらずニヤけ面だった。

じゃがいも抜きの大根とブロッコリーと人参のみのポトフと、食べ応えを出したくて茹でたカリフラワーオンリーのサラダ、

クレイジーソルトで味付けたササミのソテー、自己流ダイエットメニューも辛くはない。


母親も父親も揃って食卓を囲うのは久しぶりだ。

元々両親は共働きだし、中学の頃は彼女も塾やなんやら時間が定まっていなかったし、

姉は姉で留守がちだったせいで、いざこうして家族が揃えど微妙に喋ることがないも、

次女は全く気にせず一人妄想を膨らませていた。

  アリ、なのかな?

  良い感じ、だよね

アルバイトの後二時間くらいメールのやりとりをし、

テスト勉強をしたい近藤が自分なんかに時間を割いてくれた。


付き合っているみたいで楽しくて好きになるばかりで困る。

この調子だと、ホワイトデーに笑顔で恋人になれるのではないだろうか。

自惚れてしまいたい結衣は、少しは上手くいくのではないかと期待したくて堪らない。


そんな流れでも、自意識過剰は失敗すると必死に甘い予感を制御する。

それでもやっぱり口角が上がりっぱなしだ。

薄ら笑いが不気味だと長女に皮肉を浴びせられようがどうでもよかった。
むしろ誇らしかった。