揺らぐ幻影


皆知らないうちに恋愛をして付き合って勝手に知らない人になっていく。

淋しいと思うのはいけないこと?

彼氏って存在にヤキモチを妬いてしまう。

小中を共に過ごしたのは自分なのに、一番彼女を知っているのは知らない男の人、

取らないでと、意味不明な感情を同性相手に持ってしまう。


それはきっと、九年間一緒に居た結衣が見たことがないくらい幸せそうな笑顔を、

彼氏という人が作り出すことが可能だからだ。

オトモダチをしてきた自分よりも、親密そうな雰囲気がもどかしく、

そうやって離れていく感じがするため、結婚式の新婦友人によるスピーチでは、

『ナントカさんにナントカちゃんを取られた気がしてなんだか悲しいです』と言うのかもしれない。

嬉しいのに、なんだか悲しい。


助手席に座る友人は、さほど仲良くしてきた関係ではなく、

別グループだったから時々遊ぶ感じぐらいなのに、こんなに切ないなんて、

例えば親友がいるとして、一番理解したくても、一番傍に居たくても、それは恋人のモノだなんて歯痒い話だ。


そう、恋愛をする女の子は男の子に染められるらしい。

それは女友達には使えない魔法で、好きな人しか使えないらしい。



「初めまして彼氏さん、えー知ってますー? この子中二ん時に――「うわ! ユキ! ダメダメ」

「中二の文化祭でー?」と、わざとらしく勿体振ってみれば、「もーっ、だめってば」と友人はむくれる。

「なんだよー教えろよー」
「やだやだ秘密ユキ言っちゃヤダよ」

「お友達、教えてよ?」
「あのー「ユキー内緒だからね!」

「なにー、隠し事かよー」
「だってーやだ」

よく分からない洋楽を流す車内には、いちゃいちゃというBGMがぴったりだ。

控えめな印象しかなかった友人は、少々バカップルらしさが滲み出ていて、なんとも居心地が悪い。

タイミング良く信号が空気を読んで青に光ったので、近々遊ぶ約束をして見送った。


  ……。

もしも結衣が近藤と付き合ったなら、

愛美や里緒菜も喜ぶ半面、切なくなってくれるだろうか。
彼氏となる人に嫉妬してくれるのだろうか。

幸せの色は何?
あっという間に世界は薄暗くなり、ヘッドライト光り出していた。