飛びすぎだと笑う里緒菜のスカートを翻す悪戯な風は、彼の香りを誘う。
花に群がる蝶々になりたいけれど、どうせなら同じ花でありたい。
可能ならば一緒の目線で歩いていきたい。
、靴
……新し
他校から可愛いと評判高いチェック柄のスラックスから覗くのは、朗らかな春を誘う白色の細身なスニーカーで、
新品を履くことに意味なんてないのに、どうして結衣はホッペを桃色に染めてしまうのか。
ローファーをやめた理由など気分転換以外ないだろうに、
詳解したがる彼女は馬鹿みたいだとどこかで客観視している癖に、
恋の為にイメージチェンジしたくなったのではないかと、甘く期待してしまいたい。
「田上さん頑張ってるね」
甘い思考をプツンとハサミで切ったのは、彼の友人で、
あろうことか桃味の飴を一つ「わざと?」と、差し出すのだ。
「〜っ、市井くんって!、も。あげる、食べなよ」
どうぞどうぞと手の平を向けて、照れを隠すべく軽く睨んだ。
市井という人間はハテナが必要ないことを分かっていて、口にするのだ。
いつだってお見通しの人が少し憎たらしく不満の意を表明する結衣に対して、
余計可笑しそうに肩を竦め、「洋平は呼ばれないの?」と、
市井は左手に六つ落とし物を集めていた近藤に話しかけた。
膝立ちになっていた少女は緊張でスカートをきつく握ってしまい、学習能力ゼロだったらしく、
再び灰色の廊下に集めた飴たちを落としてしまっていた。
林檎の赤、オレンジの橙、レモンの黄、マスカットの緑、……散らばるカラフル。
「結衣ガチあほ」
「田上デジャヴュ」
友人らの声に慌てて飴ちゃんを摘む様子を、市井に見られているのが感覚で分かる。
飴ちゃん、
やっと近藤と目が合って、後ろに咲き誇るピンク色の花たちの美しさなんて風景にしてしまう。
カメラのシャッター、ピントを合わせるのは近藤、画家が描くのは近藤、結衣の瞳を奪うのは近藤、
“偶然”でも“奇遇”でもなく、恋を知ったのは近藤に出会ったせいだ。
例えば虹色の飴が空から降れば素敵な魔法にかかるこの恋は譲れない。
サイダーの青、葡萄の紫、七色には残り一色、藍色、
そう、アイが足りない。



