揺らぐ幻影

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前向きに頑張れて好きな人と火曜、水曜と二日連続メールをできてご機嫌だった。

TVや学校の話などオシャレ女子にくっだらない内容でも、結衣には楽しかった。


改めて思うも、ここまでツボが合うと惚れない理由が見つからない。

会話の流れや笑う箇所、完璧に重なるのが不思議、

これが微妙にズレるならば、恐らく結衣は姉が言うように既に付き合っていた。


些細な瞬間を大切にしたいと心底祈る。

当然、愛美も里緒菜も褒めてくれたので結衣が得意顔だったのは、わざわざ物語る必要がない。




――そんなこんなで木曜日、

高級で触りの良いボディクリームをすくったような雲は大きな塊で浮かぶ。

時折太陽が分厚い白に隠されて、視界が不意に暗くなる。

とりわけ冬の景色が繊細に感じるのは寒いせいだろうか。

春は柔らかく、夏は眩しく、秋は侘しく映るのは何故。


情緒豊かではないので、どんな言葉を並べたら適確に通じるのか分からないと口にすることが、

実は稚拙な表現力の逃げ道になるのかもしれない、そんな結衣だ。


文学に勤しまない十代は無駄に体力が余っているので、騒がしいのは毎度のことだが、

とある少女たちの露骨に誇張した悲鳴が学内に沸き上がっていた。


「ぎゃーバカ結衣」
「たがみーアウトー」
「ごめんってば」

「結衣のバッカもーん」
「さよう、田上正座しなさい」
「申し訳ございません」

わちゃわちゃしたセール売り場が似合うのは、推敲しない単語の羅列が命の女子高生らしいお喋りだからだ。


渡り廊下に散らばるのは宝石かもしれないし、イミテーションかもしれないし、

二百円で十四円お釣りがきたキャンディーかもしれない。


馬鹿を演じることは楽しいので、配役は最適だったと結衣は思っていた。

実写版にぴったりなお花畑の国の愉快な仲間たちに、キャスティングミスはない。



「何してんの、あはは」


天使の輪が輝くつるんとした髪に零れたのは、飴より甘い刺激物質。

拍手をするように胸で弾く声。
お姫様に変身させる魔法の音。



「はは、ほんと邪魔だって」

彼女が勝手に大好きな彼は今日もイケメンだった。