揺らぐ幻影

―――――――
――――

お酒の中にみりんを落とした時のような色合いのグラデーションは、

非現実的な儚さを漂わせ夜空を加工する。

中学の塾で仲良くなった彼氏いない歴年齢の貴重な人材の子と遊んだ後、

結衣は自室でアルバイト先の女子大生に電話をかけていた。

「すき」
『分かったって』

ふわふわしたお花は三月に一旦散ると聞いたのだが、どういう理由かバレンタインの香りを放出させている。

あの人の色はきっと――……

もしかすると、購入理由はそれかもしれない。


「好きー困ります」
『ウケる、乙女』
「ずっとドキドキです」
『いいなぁ若い』

「だぁって、笑った顔!」

このように甘い会話を永遠の域で繰り広げていた。

愛美や里緒菜には惚気過ぎると、直接近藤を知っているから恥ずかしいので、

ひたすら職場のお姉様に「カッコイイ」と訴える結衣に呆れず、

『普通、告白されて迷惑な子に絡まないと思うよ?』と励ましてくれる。

そこは例により、本人も正直自惚れており、

近藤に嫌われてはいないことは把握している。


相手に気がなくても最近は携帯電話の位置付けが低い故、機械的にメールをしているだけなのかもしれないが、

心底無理な女だったなら、数回形式上やりとりをして避けるのが無難なのに続いている今、

とりあえず嫌われてはいないことが結衣には幸せだった訳だ。

昨日のお昼休みはどれだけ幸福だったことか。


近藤はテスト勉強に励んでいるためメールは迷惑にならないのかと、

今後について女子大生にお導きを依頼すると、

文通が邪魔なら向こうから終了させるはずだから、結衣は数を控えておけば大丈夫だとお言葉を頂戴した。


そんなことがあって、普段通りに愛しの少年に連絡をとる。

《今日もコンコンお勉強?》

《はい、勉強しています。雪女さんはどうせTVを見ている暇人なんですね》


雪女とは小学生の頃にヤンチャという表現に甘えた実のところはただの乱暴な男子に付けられたあだ名で、

当時は本当に苦痛だった。

仲良しの女子にまで『ユキちゃん』と可愛いから良いねと悪気なく呼ばれ、

幼心はストレスで溢れていたはずだった。


けれど、